中村くんは冴くんの前まで行くと、「はい、主任。お呼びでしょうか。」と目を泳がせながら言った。
「扇風機の手配はもう済んでるのか?」
冴くんの問いに中村くんは小さな声で「まだです、、、」と答えた。
「遅い。中村、入社して1年経つよな?入社したての時のミスは目を瞑ったが、手配が遅くなると店舗だけじゃなく、お客様にも迷惑がかかるんだぞ。分かってるのか?」
「、、、はい。申し訳ありません。」
わたしは中村くんが叱られているのを見ていられず、ついつい口出しをしに冴くんのところへ行ってしまった。
「主任。中村くんは、まだ生活家電のことは勉強中ですし、特に季節家電の売れ行きの予測は難しいです。わたしの指導不足です。申し訳ありません。わたしがフォローして手配を進めるので、お説教はこの辺にしてあげてください。」
わたしがそう言うと、冴くんは「大丈夫なのか?それじゃなくても、風早は担当部門が多いだろ。」と言った。
「大丈夫です!中村くんが入って来てくれるまでは、全部一人でやってたんですから!」
「中村、風早に助けられたな。戻っていいぞ。」
冴くんはそう言うと、パソコンに向かい直し、中村くんは冴くんに向けて一礼すると、小さな声でわたしに「ありがとうございます。」と言った。
「中村くん、気にしない気にしない。まだ入社して一年だもん。季節家電は難しいからね。」
中村くんは去年入社して来たばかりのわたしの後輩だ。
わたしが入社したばかりの時は先輩が居たのだが、妊娠を機に退職してしまい、住余HD担当はわたし一人になってしまったのだ。



