春よ、瞬け。


すると、冴くんはわたしを抱き締めながら「なぁ、月麦。一つ訊いていいか?」と言った。

「ん?なに?」
「こないだ、食堂で滝と一緒に居ただろ。何話してたんだ?」
「あぁ、、、」

わたしがあんぱん買ったあの時のことかぁ。
冴くん、見てたんだ。

「わたしが冴くんに怒られたと思ったあとだったから、滝さんが"元気ない?"って声掛けてくれて、励ましてもらってた。」
「ふーん、、、そっか。」

あれ?冴くん、、、
もしかして、嫉妬してくれてたの?

「あんまり、他の男と仲良くするなよ。」
「う、うん、、、冴くん、もしかして、、、嫉妬してくれてた?」

わたしがそう訊くと、冴くんは「さて、飯作るか。」と話を逸らせ、わたしから離れるとキッチンの方へ歩いて行った。

「あ!逃げた!ちょっと冴くん!」
「腹減っただろ?すぐ作るから。」

そう言いながらキッチンで手を洗い、包丁を持って野菜を切り始める冴くん。

わたしはそんな冴くんに後ろから抱きついた。

「お、おい!包丁持ってんだから、危ないだろ!」
「じゃあ、わたしも一つ訊いていい?」
「、、、なんだよ。」
「資料保管庫に居た時、途中で言いかけた言葉の続き、聞きたい。」

わたしがそう言うと、冴くんはキャベツを切りながら「月麦にだけは、、、嫌われたくないって、言おうとしたんだよ。」と言ってくれた。

「俺は立場上、厳しくいないといけないと思ってるから、誰に嫌われてもいいと思ってる。でも、、、月麦にだけは、、、嫌われるのが怖かった。」

耳を赤く染めながら、そう伝えてくれた冴くん。

わたしは冴くんの言葉を聞き、愛おしくなって冴くんの背中に頬をつけた。

「冴くんのこと、嫌いになるわけないじゃん。わたしだって、冴くんに嫌われるのが怖かった。だって、、、大好きだから。」