春よ、瞬け。


そして、冴くんのマンションに到着し、お邪魔するのは今日で三度目。

冴くんは料理をする支度を始めると、「座って待ってろ。」と言った。

しかし、わたしはピアノが気になり「ねぇ、冴くん。ピアノ触ってもいい?」と訊いた。

「あぁ、いいけど、、、月麦弾けたっけ?」
「弾けないけど、なんか懐かしくて。」

わたしはピアノの蓋を上げると、テキトーに一つ鍵盤を押してみた。

リビングに響く、ピアノの音。

わぁ、、、やっぱり実際に聴くピアノの音は違うなぁ。

すると、冴くんが近付いて来て「ちょっと退いてみ。」と言うので、わたしは少し横にズレた。

冴くんは椅子を引き出しピアノの前に座ると、指の運動をするように動かし「弾けっかなぁ。」と呟いたあと、鍵盤の上に両手を添えた。

そして、冴くんはピアノを奏で始める

その曲は、"さくら"だった。

久しぶりに聴く、冴くんが弾く"さくら"。

前奏を聴いた段階でわたしは鳥肌が止まらなかった。

全身で感じる冴くんの弾く"さくら"は、わたしの心を解していく。

それからわたしは、サビから冴くんの演奏に合わせて歌い出した。

あの頃のように。