春よ、瞬け。


「これは、今までの売上と売上目標を把握した上で作ったリストなのか?」

株式会社DEAR本社の商品部住余担当主任の東郷冴の厳しい言葉が今日も冷たく響く。

住余HF担当社員である深見さんは、主任の冷めた視線を受けながら自信無さげに「はい、、、確認をした上で作りました。」と答えた。

「俺には、そうは見えないけどな。深見さん、君ここ何年目?」
「、、、8年目です。」
「8年目でこれなの?やり直し。今日中に作り直して持って来て。」
「はい、、、。」

主任はリストの用紙を深見さんに返すと、深見さんはそれを受け取り、肩を落として自分のデスクへと戻って行った。

いつもこんな感じで厳しい主任は、陰で"鬼上司"と呼ばれているのだが、主任自身は住余のどの部門の事も把握しており、仕事が出来る為、誰も主任に対して言い返せる人は居なかった。

そんな主任の東郷冴は、実は5歳年上のわたしの幼馴染で、わたしが本社に新入社員として入社した時に偶然にもここで働いていたのだ。

当初は主任ではなかったが、今はこうして商品部住余担当の主任を任されている。

幼い頃によく冴くんにお世話になったわたしの中では、"優しい"イメージしかなかったので、"鬼上司"と呼ばれていることが信じられなかった。

「主任。」

わたしは作成し終えたリストを持って、冴くんの元へ行った。

わたしは住余HD担当社員で、今日はその中でも夏に向けたイチ番くじのタイトルリストを作成したのだ。