曲が終わると、冴くんは片耳のイヤホンを返してくれた。
「それにしても、月麦。まだ有線のイヤホン使ってるのか?」
「別にいいでしょ〜。ワイヤレスイヤホン、高いんだもん。」
そう言いながら、わたしはスマホとイヤホンをバッグの中にしまうと、再びパソコンへと向き合った。
「今日も残業だなんて、大丈夫なのか?今日はちゃんと、休憩は取ったんだんだろうな?」
冴くんの言葉に「あはは〜!」と誤魔化すわたし。
すると冴くんは「何か買って来てやるよ。何がいい?」と言った。
「え!別にいいよ!冴くんだって店舗巡回で疲れてるでしょ?先に帰っていいよ!」
「月麦はいつも人の心配ばかりだよな。たまには、自分のことも大切にしろ。」
冴くんはそう言うと、スマホを片手に「テキトーに何か買って来るわ。」と言い、事務所から出て行った。
それから15分後、冴くんは近所のコンビニでおにぎりやサンドイッチなど、片手で食べれる物を買って来てくれた。
そして冴くんは中村くんのデスクにつくと、「今日は何をしたらいい?」と言い、一緒にコンビニのご飯を頬張りながら残業に付き合ってくれたのだった。
パソコンに向かい仕事に集中する冴くんは、とてもかっこいい。
基本的な情報は頭の中に入っていて、仕事は早く、同期よりも早く出世している。
そんな冴くんと社内に二人きり。
わたしは嬉しさ半分、申し訳なさ半分で業務を進め、退勤出来たのは21時手前だった。



