冴くんの家は会社のすぐ側にあり、わたしが過労で倒れた時に「ちゃんと飯食え。」と招かれて以来だ。
「はい、どうぞ。」
「お邪魔しまーす!」
久しぶりの冴くんの自宅。
冴くんは靴を脱ぐと、スタスタと先に部屋の中へと入って行く。
わたしはパンプスから足を解放させると、疲れから「はぁ、、、」と自然と溜め息が零れた。
そして、冴くんに続きリビングへと向かい中に入ると、わたしの目に真っ先に入ってきたのはピアノだった。
このピアノで冴くん、よく"さくら"弾いてたよなぁ。
あの頃、あのピアノを弾く冴くんの姿が今でも思い浮かぶ。
「月麦は座ってろ。すぐ飯作っちゃうから。」
冴くんはそう言い、スーツの上着を脱いで食卓テーブルの椅子に上着をかけると、ワイシャツを腕捲くりして、腰にエプロンを巻いた。
「冴くんのご飯久しぶり〜!」
わたしはそう言って、ソファーに腰を掛けた。
「月麦が倒れて以来か?」
「そうだね!あの時のうどん、美味しかったなぁ〜!」
「月麦、普段からまともに飯食ってないだろ?ちゃんと栄養あるもの食えよ。」
「んー、分かってるんだけどさぁ〜、疲れて食欲より睡眠欲の方が勝っちゃうんだよね〜。」
わたしの言葉に呆れたように微笑む冴くんは、「たまにうちに飯食いに来い。」と言ってくれた。



