彼は微笑み、私の手をさりげなく取った。その時に……私はやっと気が付いたのだ。
このままなだらかに続いていくだろうと思って居た約束された未来を失って、自分の心には不安が渦巻いてしまっていることを。
◇◆◇
「……さあ。ルシール様。どうぞ」
「はい」
私はニコラス様のエスコートで、ブライアント家紋章入りの馬車へと乗り込んだ。
とんでもなく……豪華な馬車だわ。
広さもさることながら、ふかふかの座面には高級な繻子(ベルベット)を使用。それに木製の部分には、そこここに精緻に施された彫刻。
馬車だけ見ても、とんでもなく高価なはず。それは、彼の持つブライアント公爵家の権力の強さを示しているかのようだった。
「……なんだか、緊張しますね。ルシール嬢とこうして二人きりで、お話したことはなかったので」
この馬車の持ち主というのに私に気を遣ってくれて、向かい合うように前の席に座っているニコラス様はそう言って微笑んだ。
「ええ……」
これまで私の傍には、婚約者ロベルトが居た。今夜からは、もう居ない。
このままなだらかに続いていくだろうと思って居た約束された未来を失って、自分の心には不安が渦巻いてしまっていることを。
◇◆◇
「……さあ。ルシール様。どうぞ」
「はい」
私はニコラス様のエスコートで、ブライアント家紋章入りの馬車へと乗り込んだ。
とんでもなく……豪華な馬車だわ。
広さもさることながら、ふかふかの座面には高級な繻子(ベルベット)を使用。それに木製の部分には、そこここに精緻に施された彫刻。
馬車だけ見ても、とんでもなく高価なはず。それは、彼の持つブライアント公爵家の権力の強さを示しているかのようだった。
「……なんだか、緊張しますね。ルシール嬢とこうして二人きりで、お話したことはなかったので」
この馬車の持ち主というのに私に気を遣ってくれて、向かい合うように前の席に座っているニコラス様はそう言って微笑んだ。
「ええ……」
これまで私の傍には、婚約者ロベルトが居た。今夜からは、もう居ない。



