いきなりの婚約破棄からはじまる幸せ確定IFルート

「ああ。僕は弁(わきま)えている……生まれた時に既に決まっている、埋めがたい身分差もね。僕らの婚約だってどうせ親に決められただけで、情はあっても愛はない。そんな僕なんかよりもルシールだって、事情を知れば恋煩いに病を得るほどに愛している男に譲ってもらう方が良いと言うに決まっているさ」

 ロベルトは見た目穏やかで、優しそうな外見を持っている。だが、友人たちにしか見せぬその素顔は、野心家で計算高い一面だ。

 伯爵令嬢を差し出せば公爵令嬢の婚約者が手に入るという取引に、迷わずに乗ってくれたのも、このロベルトだからと言える。

「……僕は世界中探しても、誰にも負けないと言えるほどに、ルシールを愛している」

 恋をした女性が友人の婚約者であれば、諦めるのが普通だろう……けれど、諦められなかった。

 それが僕の彼女への想いの深さを、物語っているのではないか。

「君も健康になり、僕も身分の高い妻を得る。そして、ルシールも将来安泰の公爵に愛される。全方向すべてに良い結末となるね」

「……ありがとう。ロベルト。この上なく君は良い友人だ。これまでもこれからも」