「……未来の伯爵の僕から、公爵の君へ乗り換えたように見えてしまうと、ルシールが非難されるからと……僕にあんな婚約破棄を演じるように頼むなんて、どこまでも彼女を愛しているんだねぇ」
ロベルトは勝手知ったる態度で椅子に腰掛けると、感心したように言った。
「ああ。お前がルシールを、そういう意味で、愛していなくて良かった……一人の死者が、出たかもしれないからな」
「おいおい。勘弁してくれよ。僕は自分の身の程は、弁(わきま)えているつもりだ」
ロベルトは両手を上げて敵意は一切持っていないと示すと、半分冗談だった僕は頷いた。
「ならば、それで良い……僕たちは、全員幸せになる。それで良いだろう」
……僕は学生時代に、夏の休暇をロベルトの家で過ごしたことがあった。
その時、最高潮に父と母が仲悪く、彼の家に避難していたが正しいかもしれない。
そこで偶然、彼の婚約者のルシールを見たのだ。一目惚れだった。心臓を鷲掴みにされるような大きな衝撃を受け、友人の婚約者に懸想する罪深さに恐れおののいた。
それは……禁忌の所業だ。もし、罪を犯せば、彼女本人からも、非難を受けることだろう。
ロベルトは勝手知ったる態度で椅子に腰掛けると、感心したように言った。
「ああ。お前がルシールを、そういう意味で、愛していなくて良かった……一人の死者が、出たかもしれないからな」
「おいおい。勘弁してくれよ。僕は自分の身の程は、弁(わきま)えているつもりだ」
ロベルトは両手を上げて敵意は一切持っていないと示すと、半分冗談だった僕は頷いた。
「ならば、それで良い……僕たちは、全員幸せになる。それで良いだろう」
……僕は学生時代に、夏の休暇をロベルトの家で過ごしたことがあった。
その時、最高潮に父と母が仲悪く、彼の家に避難していたが正しいかもしれない。
そこで偶然、彼の婚約者のルシールを見たのだ。一目惚れだった。心臓を鷲掴みにされるような大きな衝撃を受け、友人の婚約者に懸想する罪深さに恐れおののいた。
それは……禁忌の所業だ。もし、罪を犯せば、彼女本人からも、非難を受けることだろう。



