いきなりの婚約破棄からはじまる幸せ確定IFルート

「ああ! そういうことでしたか。申し訳ありません。先に伝えるべきでした……ルシール嬢。僕は君を愛しています」

「え? ……いっ……いつから、ですか?」

 ロベルトの友人である彼には、何度も会って話したこともあった。けれど、そんな素振りは、一度も私には見せたことはなかった。

「ずっと前からです。友人の婚約者へと懸想する罪深さは、心得て居るつもりです。ですので、ルシール嬢が今そうではないので、こうして貴女に気持ちを打ち明けています」

「私のことを、ずっと前から好きだと……?」

 半信半疑になった。

 私は平凡な貴族令嬢で、取り立てて褒められることもない。

 けれど、彼は公爵位にあるような人で……そんな訳はないけれど、詐欺師に騙されているような気持ちになった。

「別に今は、疑っていても良いですよ。これから、いくらでも証明する時間はありますから……」

 馬車は音もなく、停まった。窓を見ればそこは、私の住むモートン伯爵邸だった。

「……ありがとうございます。ニコラス様。あの……すぐにはお返事出来ません。あまりに色々なことが起こりすぎて……」