ということで。
次の日。朝の会が終わるなりすぐに葉山先生に入部届けを渡したんだ。
「ねえねえ、舞奈もどこかの部活に入るの?」
休憩時間に咲良と姫華が聞いてきた。
「実は、生徒会に入ろうと思って……」
「舞奈が生徒会! 意外なんだけど」
「もしかして、常盤君がいるからかしら?」
二人の視線が本を読んでいる常盤君に移る。
「いや、まあ、それはね」
はいともいいえとも言いにくくてあいまいに誤魔化す。
二人は一色君派だからいいけど間違ってクラスの常盤君派に聞かれたら大変だ。
生徒会に入るなんて自分が一番信じられない。
でも、入部届けは渡した。
今日から私も生徒会。
あまりに急展開で自分でもまだ追いつけないよ。
生徒会のメンバーはきっと優しく迎え入れてくれるよね。
何てことを考えていたんだけど。
「ちょっと、何のつもり?」
生徒会室に入った途端、中にいた女子生徒にすごい形相で睨まれちゃった。
高そうな鞄にキラキラとしたアクセサリー。きっと普通枠の生徒だ。
「あの、今日から生徒会に入部します、二年二組の平井舞奈です」
「あんたなんか知らないんだけど」
そりゃ、今日から生徒会に入るんだから知っているわけないじゃん!
とは反論できず……。
「それにあんた、特別枠でしょ? ここはあんたみたいな貧乏人が簡単に入れる場所じゃないのよ」
この人は自分がお金持ちであることを誇りに思っている。
常盤君はずっとこんな環境の中で頑張っているんだ。
すごいな、常盤君は。
余計に常盤君を応援する気持ちが強まってきた。
私だってこの生徒会の一員なんだ。
普通枠の偏見に負けるわけにはいかない。
「特別枠が生徒会に入っちゃいけない規則なんてないと思うけど」
ムキって音が聞こえてきそうなくらい相手の生徒の顔が歪んだ。
「あんたなんかこの部屋から出ていけ」
そう言って私のことを押し出そうとした時。
「これは何の騒ぎだい?」
生徒会室のドアが開き、眩しい光が差し込んでくる。
一色君が入ってきた。
「ねえ、一色君。変な人が生徒会室に不法侵入しているの」
「べ、別に不法侵入してるわけじゃ……」
「君が今日から僕たちの仲間になる新メンバーかな?」
一色君の思わぬ態度にその場が一瞬固まった。
「平井さん、だよね? 僕は一色光河。よろしく」
そう言って一色君が私に握手の手を差し伸べてきた。
「あ、あの、よろしくお願いします」
私が、一色君の手を握っちゃってもいいの?
しどろもどろしながら一色君の手を握り返そうとしたら。
「おい、一色。何やっているんだ」
すぐ後ろから怒鳴り声が飛び込んでくる。
常盤君がやっと来てくれた。
もう遅いんだけど。一人で心細かったじゃない。
「ったく、どこ行っていたんだ。探したぞ」
常盤君、私のこと待っていていくれたの?
険しい顔に似合わないくらい優しい。そのギャップに私は弱い。
「君が勝手に探しただけだろ? 平井さんは悪くないよ」
「お前には関係ないだろ」
常盤君と一色君の間に見えない火花がバチバチと鳴っている。
というか、常盤君が一方的に火花を散らしているのが正解かも。
「平井。こいつと握手をする必要なんかないぞ」
「それは平井さんが決めることだ。君がどうこう言うのはおかしいんじゃないのか」
「何もおかしくなんかない。平井には俺のサポートをしてもらうからな」
常盤君のその一言をきっかけに部屋の中の空気がガラッと変わったのが私でもわかった。
周りの目が常盤君と私を射るように見てくる。
「常盤、あんた何言っているの?」
さっき私に突っかかってきた女子生徒が言う。
「あんたのサポートには塩田がいるでしょ」
「生徒会役員は執行部から二人までサポートをつけていいはずだ」
「それはそうだけど一色君はサポート一人もいないでしょ」
「お前ら全員、一色のサポートみたいなものだろ」
想像以上に部屋の中の空気はギスギスしている。
派閥争いがこんなにあったなんて。
「何よ、特別枠のくせに」
乾いた一言がグサッと刺さる。
「特別枠だろうが関係ない。ルールはルールだ。お前たちが許さなくても会長は許可をしてくれる」
ちっと舌打ちをして女子生徒はそれ以上、追求するのをやめた。
「何だよ、文句あるのか」
「いや、何もないよ。君のサポートと言っても生徒会のメンバーだ。僕は平井さんのことを歓迎するよ」
ニコリと笑って一色君が私を見る。
思わずドキッとしてしまう。
一色君の眩しい笑顔をこんなに近くで見たのは初めてだ。
こんなの、一色派の女子に知られたらどんな目に合うかわからないよ。
「何見惚れてるんだ。平井の席はこっちだ」
「べ、別に見惚れてないし」
じーっと女子生徒たちの陰気な視線を感じる。
生徒会室は平和な場所じゃない。ここは戦場だ。
入部初日から不安でいっぱいなんですけど。
常盤君の左側の席に案内された。ここが私の生徒会室での座席だ。
塩田君は常盤君の右側の席にいる。
「あれ、会長はまだなんですか」
「会長は今日欠席だ。あの人は色々と大変だからな」
学園の最高権力者ともなると、色々大変なんだな。
「なあなあ、昨日のこと早く言ったほうがいいんじゃないのか?」
今日は大事なミッションがあるんだ。
「そ、そうだな」
珍しく、常盤君が少し弱気だ。
さっきのやりとりを見たらその気持ちが痛いほどわかる。
でも、これも常盤君が会長になるためだもんね。
「よし、いくか」
隣に座る常盤君と目が合う。
このドキドキが常盤君のことが好きだからか、緊張しているのか自分でもわからなかった。
次の日。朝の会が終わるなりすぐに葉山先生に入部届けを渡したんだ。
「ねえねえ、舞奈もどこかの部活に入るの?」
休憩時間に咲良と姫華が聞いてきた。
「実は、生徒会に入ろうと思って……」
「舞奈が生徒会! 意外なんだけど」
「もしかして、常盤君がいるからかしら?」
二人の視線が本を読んでいる常盤君に移る。
「いや、まあ、それはね」
はいともいいえとも言いにくくてあいまいに誤魔化す。
二人は一色君派だからいいけど間違ってクラスの常盤君派に聞かれたら大変だ。
生徒会に入るなんて自分が一番信じられない。
でも、入部届けは渡した。
今日から私も生徒会。
あまりに急展開で自分でもまだ追いつけないよ。
生徒会のメンバーはきっと優しく迎え入れてくれるよね。
何てことを考えていたんだけど。
「ちょっと、何のつもり?」
生徒会室に入った途端、中にいた女子生徒にすごい形相で睨まれちゃった。
高そうな鞄にキラキラとしたアクセサリー。きっと普通枠の生徒だ。
「あの、今日から生徒会に入部します、二年二組の平井舞奈です」
「あんたなんか知らないんだけど」
そりゃ、今日から生徒会に入るんだから知っているわけないじゃん!
とは反論できず……。
「それにあんた、特別枠でしょ? ここはあんたみたいな貧乏人が簡単に入れる場所じゃないのよ」
この人は自分がお金持ちであることを誇りに思っている。
常盤君はずっとこんな環境の中で頑張っているんだ。
すごいな、常盤君は。
余計に常盤君を応援する気持ちが強まってきた。
私だってこの生徒会の一員なんだ。
普通枠の偏見に負けるわけにはいかない。
「特別枠が生徒会に入っちゃいけない規則なんてないと思うけど」
ムキって音が聞こえてきそうなくらい相手の生徒の顔が歪んだ。
「あんたなんかこの部屋から出ていけ」
そう言って私のことを押し出そうとした時。
「これは何の騒ぎだい?」
生徒会室のドアが開き、眩しい光が差し込んでくる。
一色君が入ってきた。
「ねえ、一色君。変な人が生徒会室に不法侵入しているの」
「べ、別に不法侵入してるわけじゃ……」
「君が今日から僕たちの仲間になる新メンバーかな?」
一色君の思わぬ態度にその場が一瞬固まった。
「平井さん、だよね? 僕は一色光河。よろしく」
そう言って一色君が私に握手の手を差し伸べてきた。
「あ、あの、よろしくお願いします」
私が、一色君の手を握っちゃってもいいの?
しどろもどろしながら一色君の手を握り返そうとしたら。
「おい、一色。何やっているんだ」
すぐ後ろから怒鳴り声が飛び込んでくる。
常盤君がやっと来てくれた。
もう遅いんだけど。一人で心細かったじゃない。
「ったく、どこ行っていたんだ。探したぞ」
常盤君、私のこと待っていていくれたの?
険しい顔に似合わないくらい優しい。そのギャップに私は弱い。
「君が勝手に探しただけだろ? 平井さんは悪くないよ」
「お前には関係ないだろ」
常盤君と一色君の間に見えない火花がバチバチと鳴っている。
というか、常盤君が一方的に火花を散らしているのが正解かも。
「平井。こいつと握手をする必要なんかないぞ」
「それは平井さんが決めることだ。君がどうこう言うのはおかしいんじゃないのか」
「何もおかしくなんかない。平井には俺のサポートをしてもらうからな」
常盤君のその一言をきっかけに部屋の中の空気がガラッと変わったのが私でもわかった。
周りの目が常盤君と私を射るように見てくる。
「常盤、あんた何言っているの?」
さっき私に突っかかってきた女子生徒が言う。
「あんたのサポートには塩田がいるでしょ」
「生徒会役員は執行部から二人までサポートをつけていいはずだ」
「それはそうだけど一色君はサポート一人もいないでしょ」
「お前ら全員、一色のサポートみたいなものだろ」
想像以上に部屋の中の空気はギスギスしている。
派閥争いがこんなにあったなんて。
「何よ、特別枠のくせに」
乾いた一言がグサッと刺さる。
「特別枠だろうが関係ない。ルールはルールだ。お前たちが許さなくても会長は許可をしてくれる」
ちっと舌打ちをして女子生徒はそれ以上、追求するのをやめた。
「何だよ、文句あるのか」
「いや、何もないよ。君のサポートと言っても生徒会のメンバーだ。僕は平井さんのことを歓迎するよ」
ニコリと笑って一色君が私を見る。
思わずドキッとしてしまう。
一色君の眩しい笑顔をこんなに近くで見たのは初めてだ。
こんなの、一色派の女子に知られたらどんな目に合うかわからないよ。
「何見惚れてるんだ。平井の席はこっちだ」
「べ、別に見惚れてないし」
じーっと女子生徒たちの陰気な視線を感じる。
生徒会室は平和な場所じゃない。ここは戦場だ。
入部初日から不安でいっぱいなんですけど。
常盤君の左側の席に案内された。ここが私の生徒会室での座席だ。
塩田君は常盤君の右側の席にいる。
「あれ、会長はまだなんですか」
「会長は今日欠席だ。あの人は色々と大変だからな」
学園の最高権力者ともなると、色々大変なんだな。
「なあなあ、昨日のこと早く言ったほうがいいんじゃないのか?」
今日は大事なミッションがあるんだ。
「そ、そうだな」
珍しく、常盤君が少し弱気だ。
さっきのやりとりを見たらその気持ちが痛いほどわかる。
でも、これも常盤君が会長になるためだもんね。
「よし、いくか」
隣に座る常盤君と目が合う。
このドキドキが常盤君のことが好きだからか、緊張しているのか自分でもわからなかった。


