悪女、チャレンジします!

いよいよ生徒会総選挙の日がやってきた。

立候補期間が終わってからの二週間。

この日のために私たちは頑張ってきたんだ。

私と常盤君が付き合ったことは咲良と姫華、塩田君には話したの。

咲良と姫華はまるで自分のことのように喜んでくれた。

二人は薄々、常盤君の気持ちがわかってたみたい。

塩田君もすごく喜んでくれた。

私っていい人に恵まれているんだね。

あと、一色君にも話したよ。

伝えた時、一色君は寂しそうな顔をして「やっぱりね。常盤には敵わなかったか」と言っていた。

「俺と一色じゃ勝負にはすらなってねーよ」

ここぞとばかりに常盤君が強気だ。

「舞奈ちゃんが選んだことだ。後悔はないさ。もし常盤が嫌になったら何でも僕に言ってね」

「おい、気安く下の名前で呼ぶんじゃねーよ」

小さいところで見栄を張る常盤君も何だか可愛い。

「舞奈ちゃんには悪いけど、選挙では負けるつもりはないからね」

一色君も負けじと宣戦布告する。

「望むところだ」

常盤君と一色君の激しい戦いも今日で終わる。

事前の校内アンケートの結果はほとんど五分五分。

やや一色君がリードをしているって感じかな。

常盤君の知名度はこの半年間ですごく上がった。

それは私の作戦がうまくいったおかげでもあるんだけどね。

悪女パワーで常盤君を助けることが少しはできたかな?

「最後の最後まで諦めずに戦うぞ」

「うん、そうだね」
「頼むぜ、将貴。俺たちが新しい歴史を作るんだ」

理想の学校のために。

平和な学校のために。

常盤君が生徒会長になってほしい。

……一色君が生徒会長になっても良い学校になるとは思うけどね。

なんて、常盤君には言えないけど。

常盤君も薄々それはわかっているんじゃないかな。

二人はライバルだけどお互いを認め合っている。

男子の友情ってちょっぴり不思議だな。

最後のアピール、全校演説も終了した。

あとは投票するだけ。

教室に戻るとクラスごとに選挙管理委員会が投票用紙を配る。

いつもの席に常盤君の姿はない。

立候補者は演説の後に放送室に移動しているんだ。

テレビの画面に緊張した顔の常盤君が映っている。

私は遠くから応援することしかできない。

お願い。どうか常盤君が生徒会長になれますように。
 
配られた投票用紙に向かって祈るように常盤君の名前を書く。

できることは全部やった。

あとは結果を待つだけだ。