木曜日の朝、校内新聞を読むためにいつもより早く家を出た。
昨日の生徒会でも常盤君は新聞の記事を読ませてくれなかった。
何なら生徒会の終了時刻になってもまだプリントアウトが終わってなかった。
貼るの手伝おうかって聞いても、そっけなく断るだけ。
まるで私なんかいないみたいな扱いで寂しかったな。
だから、今日の朝は校内新聞を読むのをすごく楽しみにしてたんだけど……。
記事を読んだ瞬間、体が固まってしまった。
新聞の見出しに大きな文字で「副会長、特別枠女子と密談」と書いてある。
記事の指す副会長は一色君のことだ。
私と一色君が二人で話していることが記事になっていた。
生徒たちが歩く足音が聞こえる。
学校中の生徒がこの記事を読んでしまう。
たちまちこの記事のことは学校中で噂になるだろう。
一色君派の人たちがこの記事を読んだらどう思うか……。
想像するだけで寒気がする。
周りをチラッと見て、誰も見てないことを確認すると新聞を一枚剥がしとった。
ささっとポケットにしまい一階奥の空き教室に入る。
うわ、マジか。
新聞には私と一色君が話す様子が写真付きで書かれていた。
まさか校内にいながら写真を撮られるなんて。
しかも載っている写真は最近のものばかり。
中には生徒会室で話しているところまである。
記事にはまるで私が一色君と近づくために生徒会に入ったように書かれている。
常盤君がこんなひどいことをするなんて、信じられない。
一色君への嫌がらせだ。それに私をうまく利用したんだ。
記事には私のことが「悪女」だと書かれていた。
……許せない。あまりにもひどい、ひどすぎるよ。
新聞に視線を落とすと、一枚の写真が目に入った。
先週の金曜日に一色君と話した時のだ。
その時、あの場に桃井さんがいたような……。
この写真を撮ったのって桃井さん?
でも、桃井さんが撮った写真を常盤君がどうして持っているんだろう。
謎は深まるばかり。
一回、常盤君に話を聞かないと。
準備室を飛び出し、勢いよく走って階段を駆け上がる。
どうせ自分の席に座って本でも読んでいるに違いない。
すぐに話を聞き出してやる。
そう勢い込んで教室に入ったんだけど。
教室にいる生徒の目がジロリと私を睨んでいる。
咲良と姫華までもにらむように私を見ている。
「みんな、どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ!」
咲良が私に向かって叫んでいる。
「あの記事、どういうこと?」
みんな校内新聞を読んでしまったのだ。
「違うの、あの記事は嘘なの」
「でも写真が何枚も載っていたわ」
今度は姫華が聞いてくる。
「あれは、ただ生徒会のことを相談してただけで……」
「一色君と二人っきりだったけど?」
そう言われてしまうと何も言い返せない。
「舞奈は一色君と仲良くなるために生徒会に入ったんだ」
「違う、そうじゃない」
みんなあの記事の内容を信じている。
どうして私の言葉を信じずに新聞のことだけを信じるの?
あの記事を書いた人はあそこにいる。
なんであんな記事を書いたのか早く教えなさいよ!
常盤君はずっと座ったまま読書を続けている。
人の波に押されて、私は常盤君に近づけない。
「離して、離してよ」
「ねえ、舞奈どういうこと?」
「私たちを裏切ったの?」
「特別枠のくせに許せない」
クラスの誰かがそう言った。
「特別枠が一色君と仲良くなるなんておかしい」
「きっと一色君のことを騙したんだ」
「だって悪女なんだもんね」
違う。私は悪女じゃない。
常盤君が悪女が好きって言うから。
だから私は悪女になったのに。
でも、そっか。
常盤君は私のこと、最初から悪女だと思っているんだもんね。
私が常盤君のタイプに近づくために悪女を勉強したのも知らないんだ。
「この悪女、恥を知れ」
畳み掛けるように頭上から声が聞こえてくる。
「おい、何をしている!」
遠くから葉山先生の声が聞こえた。
慌てたような顔をする常盤君の姿が見えた気がした。
……誰か、助けて。
そこで私の意識はプツンと切れた。
昨日の生徒会でも常盤君は新聞の記事を読ませてくれなかった。
何なら生徒会の終了時刻になってもまだプリントアウトが終わってなかった。
貼るの手伝おうかって聞いても、そっけなく断るだけ。
まるで私なんかいないみたいな扱いで寂しかったな。
だから、今日の朝は校内新聞を読むのをすごく楽しみにしてたんだけど……。
記事を読んだ瞬間、体が固まってしまった。
新聞の見出しに大きな文字で「副会長、特別枠女子と密談」と書いてある。
記事の指す副会長は一色君のことだ。
私と一色君が二人で話していることが記事になっていた。
生徒たちが歩く足音が聞こえる。
学校中の生徒がこの記事を読んでしまう。
たちまちこの記事のことは学校中で噂になるだろう。
一色君派の人たちがこの記事を読んだらどう思うか……。
想像するだけで寒気がする。
周りをチラッと見て、誰も見てないことを確認すると新聞を一枚剥がしとった。
ささっとポケットにしまい一階奥の空き教室に入る。
うわ、マジか。
新聞には私と一色君が話す様子が写真付きで書かれていた。
まさか校内にいながら写真を撮られるなんて。
しかも載っている写真は最近のものばかり。
中には生徒会室で話しているところまである。
記事にはまるで私が一色君と近づくために生徒会に入ったように書かれている。
常盤君がこんなひどいことをするなんて、信じられない。
一色君への嫌がらせだ。それに私をうまく利用したんだ。
記事には私のことが「悪女」だと書かれていた。
……許せない。あまりにもひどい、ひどすぎるよ。
新聞に視線を落とすと、一枚の写真が目に入った。
先週の金曜日に一色君と話した時のだ。
その時、あの場に桃井さんがいたような……。
この写真を撮ったのって桃井さん?
でも、桃井さんが撮った写真を常盤君がどうして持っているんだろう。
謎は深まるばかり。
一回、常盤君に話を聞かないと。
準備室を飛び出し、勢いよく走って階段を駆け上がる。
どうせ自分の席に座って本でも読んでいるに違いない。
すぐに話を聞き出してやる。
そう勢い込んで教室に入ったんだけど。
教室にいる生徒の目がジロリと私を睨んでいる。
咲良と姫華までもにらむように私を見ている。
「みんな、どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ!」
咲良が私に向かって叫んでいる。
「あの記事、どういうこと?」
みんな校内新聞を読んでしまったのだ。
「違うの、あの記事は嘘なの」
「でも写真が何枚も載っていたわ」
今度は姫華が聞いてくる。
「あれは、ただ生徒会のことを相談してただけで……」
「一色君と二人っきりだったけど?」
そう言われてしまうと何も言い返せない。
「舞奈は一色君と仲良くなるために生徒会に入ったんだ」
「違う、そうじゃない」
みんなあの記事の内容を信じている。
どうして私の言葉を信じずに新聞のことだけを信じるの?
あの記事を書いた人はあそこにいる。
なんであんな記事を書いたのか早く教えなさいよ!
常盤君はずっと座ったまま読書を続けている。
人の波に押されて、私は常盤君に近づけない。
「離して、離してよ」
「ねえ、舞奈どういうこと?」
「私たちを裏切ったの?」
「特別枠のくせに許せない」
クラスの誰かがそう言った。
「特別枠が一色君と仲良くなるなんておかしい」
「きっと一色君のことを騙したんだ」
「だって悪女なんだもんね」
違う。私は悪女じゃない。
常盤君が悪女が好きって言うから。
だから私は悪女になったのに。
でも、そっか。
常盤君は私のこと、最初から悪女だと思っているんだもんね。
私が常盤君のタイプに近づくために悪女を勉強したのも知らないんだ。
「この悪女、恥を知れ」
畳み掛けるように頭上から声が聞こえてくる。
「おい、何をしている!」
遠くから葉山先生の声が聞こえた。
慌てたような顔をする常盤君の姿が見えた気がした。
……誰か、助けて。
そこで私の意識はプツンと切れた。


