悪女、チャレンジします!

「ただいま」

「あれ、いつもより早かったわね」

「うん。会長がいつも頑張っているから今日は早く帰っていいって」

「あら、よかったじゃない。会長さんも舞奈の頑張りよくわかってくれているのね」

校内新聞を私が書いていることはお母さんとお父さんに話したの。

記事を私が書いているってことにもびっくりしてたけど、私が案を出したって言ったらもっとびっくりしていた。

昔からそういう目立つこととかしてこなかったんだよね。

お父さんも帰ってきて三人で一緒に夕飯を食べる。

今日は私の好きなカレーライス。ちなみにカレーは甘口一択。

「舞奈、学校で何かあった?」

スプーンでカレーをすくっていると心配そうな声でお母さんが聞いてきた。

「私、何か変?」

「苦そうな顔してカレーを食べているから」

私って案外、顔に出やすいタイプなのかな。

「お母さんの作るカレーが美味しくないはずないもの」

こういうところ、お母さんってやけに自信家なんだよな。

私も少しは見習いたいよ。

「うーん、まあね」

パクッとカレーを口に入れるとルーのほのかな甘みが口の中で広がっていく。

「生徒会のことか?」

普段は鈍感なのに、妙なところでお父さんは鋭くなるんだよね。

「そうそう。来月ね、次の生徒会役員を決める選挙があるの。それで候補が二人いてね、一人は私と同じクラスでずっと応援してたのね。でもその人と喧嘩しちゃてさ」

ま、さすがにその人が好きとは言わないけど。

「で、今日、もう一人の候補から応援してくれないかって言われたの」

「あら、舞奈ったらモテモテじゃない」

そういう話じゃないんだよ、お母さん。

「相手はちゃんとした人なのかい?」

お父さんも話合わせないでよ。

「モテてるとかそういうんじゃないから」

「生徒会長を目指すってことはきっとちゃんとした人よ。あの中学に通うってことはどっちもお金持ちのお坊ちゃんじゃない?」

二人に話したのもう後悔してきた。

「どうなんだ、舞奈。そうなのか?」

「今日言ってきた人は普通枠だけど、ずっと応援してた人は特別枠だよ」

「何だ、そうなの」

あのね、お母さん。私も特別枠の生徒なんですけど……。

「その人、どこの小学校出身なんだ?」

「うーんとね、北小」

そう言った途端、お母さんとお父さんの顔色が急に変わった。

「舞奈、そんな人の応援はやめて今日の人に切り替えた方がいいわよ。その人が舞奈と喧嘩しているんでしょ?」

「北小の生徒はろくな奴がいない。よく天聖中学に特別枠で入学できたもんだな」

常盤君のことを何も知らないで。勝手なことを言わないでよ。

「舞奈。人を見る目は大事にしたほうがいいわよ」

小学校とか周りのことだけで勝手に判断して。

人をちゃんと見てないのはどっちなの。

もう、こう言うの本当に嫌。

「ごちそうさま。残りは部屋で食べる」

「ちょっと舞奈」

部屋にこもって残りのカレーライスを食べる。

さっきまでの甘さはどこに行ったのか、しょっぱい味がする。

お母さんとお父さんに話した時二人がどんな反応をするか薄々わかってた。

わかってて話を続けた。

特別枠だから。北小の出身だから。

そうやって区別をしていたのは私も同じだ。

視界がぼんやり霞む。

いつの間にか泣いていたみたい。

泣きたくなるようなことはいっぱいある。

自分でもどうして泣いていたのか、わからなかった。