悪女、チャレンジします!

案の定、校内新聞の効果は絶大だった。

常盤君派に傾いていた人たちもまた一色君派に戻りそうな勢いだ。

自分のやったことの大きさにびっくりする。

校内新聞にここまで大きな力があるなんて思ってなかったよ。

常盤君はこうなることがわかっていたのかな。

だからあんなに昨日は怒っていたのかも。

でも、それって。

私のやっていることを信じてくれていたってことなのかな。

いや、きっと校内新聞の力を信じていただけだ。

本を読んでいる常盤君の顔がいつもよりさらに無愛想に見えた。

周りでみんなが一色君の話ばかりしているのだ。気分がいいわけがない。

「来週から生徒会選挙の出馬期間だ」

「一年って早いね」

学校中が少しずつ、生徒会選挙のことでそわそわとぞよめいている。

「次の生徒会長は一色君かな」

「いや、常盤君って可能性もあるんじゃない?」

みんなにとって選挙は年に一回のイベントなんだろうけど、当事者にとってはすごく重たい出来事だ。

この選挙でこれからの一年が決まる。

それだけ全てをかけた戦いなんだ。

「ねえ、舞奈も選挙にでないの?」

「私? 私はいいよ、今のままで十分」

「常盤君と一色君が見放題だもんね」

「舞奈は常盤君派だから一色君には興味ないですわよ」

「わからないよ。近くであんなイケメンずっと見てたら心変わりしてもおかしくないでしょ」

ズキっと咲良の言葉が突き刺さる。

心変わりってわけじゃないけど、ちょうどふらふらしているところなんだよね。

恋愛的にってことじゃないんだけどさ……。

「舞奈が書記とかでもいいと思うけどな」

「そういうのはいいの。事務作業で精一杯です」

私には責任を背負うなんてできない。

今みたいに常盤君の仕事のサポートだけでもいっぱいいっぱいだ。

でも、この選挙の結果によっては私の仕事も変わっちゃうのかな。

常盤君はどんな気持ちでいるんだろう。

常盤君は顔に気持ちが出やすいって塩田君が言っていたのを思い出す。

けど、いくら横顔を見たって常盤君が何を考えているのか全然わからなかった……。