常盤君に記事を見られないように気をつけながら校内新聞をプリントアウトする。
一色君の特集をメインにしたなんてバレたら機嫌悪くなるもん。
「校内新聞の張り替え、行ってきます」
そう宣言してそそくさと生徒会室を出る。
いつもは常盤君と塩田君と一緒に行くんだけど、この新聞の張り替えを常盤君に見せるわけにはいかないし……。
この量を一人で張り替えるとなると、結構時間がかかりそうだな。
「おい、まだそこにいたのか」
振り向くと常盤君が相変わらずの無愛想な顔でこっちに向かって歩いていた。
「どうしたの? 仕事あるんじゃないの?」
「校内新聞を貼るのも俺の仕事だろ」
常盤君がそっぽ向きながらそう答える。
常盤君が手伝ってくれるのは嬉しいけど、この新聞を見せるのはかなり気まずい。
「だ、大丈夫だよ。私一人でできるよ」
「結構な量あるだろ。あんまり一人で抱え込むな」
何で今そういうこと言うの。
優しい言葉をかけないでよ。
常盤君のこともっと好きになる。
好きになったら胸の傷がもっと痛くなっちゃうよ。
「いや平気だってば」
「せっかく俺が手伝うって言っているのに」
無理やり引っ張られて、手元から新聞がこぼれ落ちた。
ぱらっとめくれた新聞が花びらのように宙を舞う。
「何だよ、これ」
一色君のニコッとした笑顔が床の上に咲き誇る。
「俺がゴミを拾っている間、一色と仲良くこんな記事を書いてたのか」
「ごめん」
言い訳のしようもない。
で、でもさ。さっさと書けって言ったり、記事のこと何も手伝わなかったり。
それなら、助けてくれた一色君のことを書いても悪くないよね?
「裏で一色とつながっているのか」
「そうじゃないよ。校内新聞なんだから一色君のことを書いてもいいでしょ」
気まずそうに常盤君が顔を背ける。
生徒会として発行している以上、一色君のことを書いたって当然だ。
「この新聞は常盤君のものじゃない。生徒会のものなの」
「今がどんなタイミングかわかっているのか。もうすぐ選挙が始まるんだぞ」
「それはわかっているけど……」
来週から二週間が候補者の出馬期間だ。
そして九月の末に全校演説があり、選挙が行われる。
「平井のこと、パートナーだと思っていたのは俺だけだったのか」
「そうじゃないよ。私だって常盤君のこと」
「お、いたいた」
塩田君が私たちのところに駆け寄ってくる。
「よかったな、見つかって。平井さんが部屋を出てすぐ、将貴は心配してたんだぜ」
「こいつには俺の助けはいらないみたいだ」
塩田君が床にこぼれた校内新聞を見つけた。
「一色のことばっか書いてあるじゃねーか」
「やっぱりあれは本当だったんだな」
常盤君がぼそっと呟いたのを聞き逃さなかった。
あれって何のこと? 常盤君は誰かに私のことを何か言われたの?
「舞奈ちゃん。こんなところにいたんだ」
一色君が私のそばに駆け寄ってくる。
「どうしたの、新聞が床に散らばっているよ」
「うっかり手が滑っちゃって」
一色君が新聞を拾う姿を常盤君が呆然と見続けていた。
「一色が来てくれてよかったな。戻るぞ、潤」
「将貴、これでいいのかよ」
塩田君の呼びかけも聞こえないふりをして常盤君は歩き出す。
何度か振り返りながら塩田君も後を追っていなくなってしまった。
どうしよう。私、取り返しのつかないことをしちゃった。
これじゃあ、常盤君のパートナー失格だ。
「素敵な記事を書いてくれてありがとう。明日のみんなの反応が楽しみだな」
私の気も知らず、一色君が楽しそうに笑っていた。
一色君の特集をメインにしたなんてバレたら機嫌悪くなるもん。
「校内新聞の張り替え、行ってきます」
そう宣言してそそくさと生徒会室を出る。
いつもは常盤君と塩田君と一緒に行くんだけど、この新聞の張り替えを常盤君に見せるわけにはいかないし……。
この量を一人で張り替えるとなると、結構時間がかかりそうだな。
「おい、まだそこにいたのか」
振り向くと常盤君が相変わらずの無愛想な顔でこっちに向かって歩いていた。
「どうしたの? 仕事あるんじゃないの?」
「校内新聞を貼るのも俺の仕事だろ」
常盤君がそっぽ向きながらそう答える。
常盤君が手伝ってくれるのは嬉しいけど、この新聞を見せるのはかなり気まずい。
「だ、大丈夫だよ。私一人でできるよ」
「結構な量あるだろ。あんまり一人で抱え込むな」
何で今そういうこと言うの。
優しい言葉をかけないでよ。
常盤君のこともっと好きになる。
好きになったら胸の傷がもっと痛くなっちゃうよ。
「いや平気だってば」
「せっかく俺が手伝うって言っているのに」
無理やり引っ張られて、手元から新聞がこぼれ落ちた。
ぱらっとめくれた新聞が花びらのように宙を舞う。
「何だよ、これ」
一色君のニコッとした笑顔が床の上に咲き誇る。
「俺がゴミを拾っている間、一色と仲良くこんな記事を書いてたのか」
「ごめん」
言い訳のしようもない。
で、でもさ。さっさと書けって言ったり、記事のこと何も手伝わなかったり。
それなら、助けてくれた一色君のことを書いても悪くないよね?
「裏で一色とつながっているのか」
「そうじゃないよ。校内新聞なんだから一色君のことを書いてもいいでしょ」
気まずそうに常盤君が顔を背ける。
生徒会として発行している以上、一色君のことを書いたって当然だ。
「この新聞は常盤君のものじゃない。生徒会のものなの」
「今がどんなタイミングかわかっているのか。もうすぐ選挙が始まるんだぞ」
「それはわかっているけど……」
来週から二週間が候補者の出馬期間だ。
そして九月の末に全校演説があり、選挙が行われる。
「平井のこと、パートナーだと思っていたのは俺だけだったのか」
「そうじゃないよ。私だって常盤君のこと」
「お、いたいた」
塩田君が私たちのところに駆け寄ってくる。
「よかったな、見つかって。平井さんが部屋を出てすぐ、将貴は心配してたんだぜ」
「こいつには俺の助けはいらないみたいだ」
塩田君が床にこぼれた校内新聞を見つけた。
「一色のことばっか書いてあるじゃねーか」
「やっぱりあれは本当だったんだな」
常盤君がぼそっと呟いたのを聞き逃さなかった。
あれって何のこと? 常盤君は誰かに私のことを何か言われたの?
「舞奈ちゃん。こんなところにいたんだ」
一色君が私のそばに駆け寄ってくる。
「どうしたの、新聞が床に散らばっているよ」
「うっかり手が滑っちゃって」
一色君が新聞を拾う姿を常盤君が呆然と見続けていた。
「一色が来てくれてよかったな。戻るぞ、潤」
「将貴、これでいいのかよ」
塩田君の呼びかけも聞こえないふりをして常盤君は歩き出す。
何度か振り返りながら塩田君も後を追っていなくなってしまった。
どうしよう。私、取り返しのつかないことをしちゃった。
これじゃあ、常盤君のパートナー失格だ。
「素敵な記事を書いてくれてありがとう。明日のみんなの反応が楽しみだな」
私の気も知らず、一色君が楽しそうに笑っていた。


