放課後。校内新聞の記事を書いているとあっという間に時間が過ぎてしまう。
新しいネタにも困ってくるよ。
「平井はまだ帰らないのか?」
隣で帰る支度をしながら常盤君が聞いてくる。
いつもよりも声が低く聞こえるのは気のせいかな?
「うん。まだ記事が書き終わってないんだよね。このペースじゃ明日も残るかも」
「そうか」
ぼそりと言って、また帰る準備の続きを始めた。
何のために聞いてきたんだろう。
「行くぞ、潤」
「平井さんは来ないの?」
不意に塩田君に名前を呼ばれて心臓がキュッとなる。
「何々、何の話?」
「あれ、将貴から聞いてない? 今からグラウンドのゴミ拾いをしようかと思ってさ。平井さんも誘いなって言ったじゃないか」
「いや、なんか忙しそうにしてたから」
嘘。さっきのあれで誘ったつもりになってたの?
あんな聞き方でわかるわけないでしょ!
生徒会に入ってもう四ヶ月近く経っている。
常盤君のパートナーとして寄り添ってきたつもりだ。
それなのに、最近は妙な距離感があるんですけど!
私と常盤君の距離は縮まるどころか、むしろ広がっているみたいだよ。
「最初からゴミ拾いに行こうって言ってくれればよかったじゃん」
「記事を書き終わってないから誘えないんだろう。さっさと書けよ」
「何よ。そんな言い方しなくてもいいでしょ」
「ちょっと、どうしたんだい?」
一色君が私と常盤君の間にはいる。
「ちっ。お前には関係ないだろ」
誰が見てもはっきりと分かるくらい常盤君が顔をひきつらせる。
一色君と仲が悪いのはいつものことだけど今日はやけに機嫌が悪い。
「生徒会活動のことだろう。関係なくはないよ」
ニコッと一色君が笑顔を見せてくれる。
この構図だけ切り取ったら優しい一色君が意地悪な常盤君から私を庇ってくれているみたい。
「舞奈ちゃんは僕たち生徒会のために校内新聞を書いているんだ。早く書けって言い方はないんじゃないか」
「はいはい、すいませんでした」
ちょっと、そんな言い方したら印象悪くなっちゃうでしょ……。
気がつけば、私は常盤君のことを心配してしまう。
誰がどう見ても一色君の方が優しいのに。
私は常盤君のことが気になっちゃう。
「そうだ。僕も校内新聞の記事を書くのを手伝うよ」
「いや、いいよ。一色君、すごく忙しいだろうし」
「僕なら大丈夫。舞奈ちゃんに何でも押し付けるわけにはいかないさ。そうだ、ちょうどいいネタがあったはずだ」
他の女子メンバーの視線をズキズキと感じる。
「あの子、特別枠でしょ? 一色君って優しいね」
「いいなー、私もあんなこと言われたい」
表面的には穏やかだけど、その言葉の裏に棘がついているのはわかる。
なんであいつが一色君と仲良くしているの?
そんな恨みをすごく感じる。
「一色に手伝ってもらえるならよかったじゃないか」
そんな言い方したら、まるで私が一色君をたぶらかしているみたいじゃない。
「潤、行くぞ」
「ちょっと待ってよ、いいのかよ。おい、将貴」
常盤君がズカズカと生徒会室を出ていく。
その後ろ姿を黙って見ることしかできない。
追いかけたいのに追いかけられない。
私、何のために生徒会に入ったんだろう?
「どうしたの? 浮かない顔して」
一色君が私の目を真っ直ぐ見てくる。
あれ、少しずつ近づいてない?
「そんな顔、舞奈ちゃんには似合わないよ」
他の人には聞こえないくらい小さな声で言う。
やばい、整ったイケメンフェイスが急接近してきた。
無理無理、あんなのドキドキが耐えられない。
私ったら、何考えているんだろう。
パソコンを持ってきた一色君がチョコを持って常盤君の席に座る。
「ほら。チョコでも食べて、さっさと終わらせよう」
一色君がずるすぎる。
そんなに優しくしないでよ。
いつも常盤君が座っているところにいるからか、常盤君と一色君が重なって見える。
常盤君もこうやって笑顔になって、一緒に記事を書いてくれたらいいのに。
「一緒に頑張ろうね」
もう知らないもんね。
一色君を褒める記事を書いてやるんだから。
パソコンに向き直り、どんな記事を書くか考えることにした。
新しいネタにも困ってくるよ。
「平井はまだ帰らないのか?」
隣で帰る支度をしながら常盤君が聞いてくる。
いつもよりも声が低く聞こえるのは気のせいかな?
「うん。まだ記事が書き終わってないんだよね。このペースじゃ明日も残るかも」
「そうか」
ぼそりと言って、また帰る準備の続きを始めた。
何のために聞いてきたんだろう。
「行くぞ、潤」
「平井さんは来ないの?」
不意に塩田君に名前を呼ばれて心臓がキュッとなる。
「何々、何の話?」
「あれ、将貴から聞いてない? 今からグラウンドのゴミ拾いをしようかと思ってさ。平井さんも誘いなって言ったじゃないか」
「いや、なんか忙しそうにしてたから」
嘘。さっきのあれで誘ったつもりになってたの?
あんな聞き方でわかるわけないでしょ!
生徒会に入ってもう四ヶ月近く経っている。
常盤君のパートナーとして寄り添ってきたつもりだ。
それなのに、最近は妙な距離感があるんですけど!
私と常盤君の距離は縮まるどころか、むしろ広がっているみたいだよ。
「最初からゴミ拾いに行こうって言ってくれればよかったじゃん」
「記事を書き終わってないから誘えないんだろう。さっさと書けよ」
「何よ。そんな言い方しなくてもいいでしょ」
「ちょっと、どうしたんだい?」
一色君が私と常盤君の間にはいる。
「ちっ。お前には関係ないだろ」
誰が見てもはっきりと分かるくらい常盤君が顔をひきつらせる。
一色君と仲が悪いのはいつものことだけど今日はやけに機嫌が悪い。
「生徒会活動のことだろう。関係なくはないよ」
ニコッと一色君が笑顔を見せてくれる。
この構図だけ切り取ったら優しい一色君が意地悪な常盤君から私を庇ってくれているみたい。
「舞奈ちゃんは僕たち生徒会のために校内新聞を書いているんだ。早く書けって言い方はないんじゃないか」
「はいはい、すいませんでした」
ちょっと、そんな言い方したら印象悪くなっちゃうでしょ……。
気がつけば、私は常盤君のことを心配してしまう。
誰がどう見ても一色君の方が優しいのに。
私は常盤君のことが気になっちゃう。
「そうだ。僕も校内新聞の記事を書くのを手伝うよ」
「いや、いいよ。一色君、すごく忙しいだろうし」
「僕なら大丈夫。舞奈ちゃんに何でも押し付けるわけにはいかないさ。そうだ、ちょうどいいネタがあったはずだ」
他の女子メンバーの視線をズキズキと感じる。
「あの子、特別枠でしょ? 一色君って優しいね」
「いいなー、私もあんなこと言われたい」
表面的には穏やかだけど、その言葉の裏に棘がついているのはわかる。
なんであいつが一色君と仲良くしているの?
そんな恨みをすごく感じる。
「一色に手伝ってもらえるならよかったじゃないか」
そんな言い方したら、まるで私が一色君をたぶらかしているみたいじゃない。
「潤、行くぞ」
「ちょっと待ってよ、いいのかよ。おい、将貴」
常盤君がズカズカと生徒会室を出ていく。
その後ろ姿を黙って見ることしかできない。
追いかけたいのに追いかけられない。
私、何のために生徒会に入ったんだろう?
「どうしたの? 浮かない顔して」
一色君が私の目を真っ直ぐ見てくる。
あれ、少しずつ近づいてない?
「そんな顔、舞奈ちゃんには似合わないよ」
他の人には聞こえないくらい小さな声で言う。
やばい、整ったイケメンフェイスが急接近してきた。
無理無理、あんなのドキドキが耐えられない。
私ったら、何考えているんだろう。
パソコンを持ってきた一色君がチョコを持って常盤君の席に座る。
「ほら。チョコでも食べて、さっさと終わらせよう」
一色君がずるすぎる。
そんなに優しくしないでよ。
いつも常盤君が座っているところにいるからか、常盤君と一色君が重なって見える。
常盤君もこうやって笑顔になって、一緒に記事を書いてくれたらいいのに。
「一緒に頑張ろうね」
もう知らないもんね。
一色君を褒める記事を書いてやるんだから。
パソコンに向き直り、どんな記事を書くか考えることにした。


