悪女、チャレンジします!

集合時間ギリギリのタイミングで私たち三人は生徒会室に入った。

すでに他のメンバーは集まっている。

「遅かったわね。逃げたのかと思ったわ」

桃井さんが意地悪い笑みを浮かべてこっちを見る。

……あれ、みんなのこっちを見る視線が何だか痛い。

「それじゃあ、集めた情報を共有しようか。と言っても、さっき桃井さんが重要な情報を教えてくれたんだけどね」

ニヤリと桃井さんと周りの女子が笑みを浮かべる。

「常盤。やっぱりあんたが犯人だったのね」

「おい、どういうことだよ」

常盤君が桃井さんをきつくにらみ返す。

「ねえ、常盤。このペンに見覚えない?」

そう言って桃井さんは一本のペンを取り出した。

え、そのペンって。

「それは俺のペンじゃないか」

「認めたわね、これがあなたのペンだって」

勝ち誇ったように桃井さんが笑う。

「なんでお前が俺のペンを持っているんだよ」

「がっかりだよ、常盤」

一色君が悲しそうに呟く。

「このペンはさっき桃井さんが花壇で見つけたんだ」

「花壇だって?」

「さっき花壇にいたのはこのペンを探すためだったのね」

「待て、どういうことだよ」

「このペンはね、荒れた花壇の土の中から出てきたの。きっと花壇を壊した時に落としたんでしょうね」

「違う。そのペンはさっきの昼休みまで俺の机の上にあった」

話の流れに全然ついていけない。

常盤君がペンを無くしたのはボランティアの後だ。

ペンと花壇は何も関係がない。

「とぼけたって無駄よ! ここに証拠がある。自分が犯人だと認めなさい」

生徒会メンバーの鋭い視線が突き刺さる。

違う、私たちは犯人じゃない。

「花壇を壊したのは自分たちのイメージアップをするためでしょ? 怖い怖い。特別枠は何を考えるかまるでわからないわ」

唇をぎゅっと噛み締めて常盤君が耐えている。

「残念だよ。同じ生徒会のメンバーとして君は学校に迷惑をかけることはしないと思っていたのに」

いつもは明るい一色君の声が、色あさた灰色のような響きで聞こえる。

今、常盤君は最大のピンチにいる。

それなのに。

常盤君はニッと笑みを浮かべていた。