悪女、チャレンジします!

新学期が始まって一週間が経った。

まだ常盤君と同じクラスになったことに全然なれないよ。

常盤君の凛々しい横顔を眺めるだけでうっとりしちゃう。

「それじゃあ、私、部活行くね」

「私も。じゃあね、舞奈」

「うん、ばいばい」

咲良はバスケ部、姫華はテニス部に入っている。

私はどこの部活にも入ってない。

これと言ってやりたい部活もなかったんだよね。

自分の好きなことに夢中になって取り組めるのってかっこいいなって思うけど、私にはそういうのないからな。

さて、今日ものんびりと帰ろうかなって思ってたんだけど。

「おーい、平井」

廊下に出た瞬間、生徒会室から出てきた葉山先生に見つかった。

なんだか、嫌な予感。

「ちょうどいいところにいた。ちょっと荷物運ぶの手伝ってくれないか」

えー、めんどくさいな。

断ろうかなって思ったんだけど。

人から頼まれると断れないんだよね、私。

昔からいつもそう。めんどくさいことがあってもついつい引き受けちゃうんだ。

周りからはお人好しだよねって言われるけど、どうなんだろう。

「ま、まあ、たまにはいいですけど」

「さすが。平井は優しいって聞いてたけど本当だな」

ま、これも特別枠で入ってくる後輩のためだ。

そう自分に言い聞かせて生徒会室に入ると……。

ドキンっ!

荷物を運ぶ常盤君の姿が見えた。

腕の筋肉から血管がちょうど良く浮かび上がっている。

こんなチャンス滅多にない!

今、常盤君と目が合ったかも。

そう思ったけど、そのまま常盤君はスタスタと荷物を運びに行ってしまった。

ちょっと同じクラスメートなのに冷たくない?

そういえば常盤君って超絶クールで教室でもあまり話さないって噂があった。

同じクラスにいるけど、常盤君の声ほとんど聞かないな。

「平井、これを一階の事務室に持って行ってくれ」

葉山先生に段ボールを二箱渡される。

重っ! ちょっとお手伝いの女子に持たせるには重すぎるんじゃないの?

しかも、ここ三階なんだけど。一階までって途方もない距離だよ。

とほほって思った時には時すでに遅し。

良い子ちゃんも困っちゃうよ。

ま、一回引き受けちゃったらやるしかないよね。

常盤君の後を追いかけるように私も階段に向かって進み出した。