悪女、チャレンジします!

気がつけばもう水曜日。三年生が修学旅行に行っている一週間も折り返しだ。

昨日は生徒会は休みだったけど、私たち三人は放課後に集まって作業をしていた。

「よし、できた」

何とか第一弾となる校内新聞の記事が完成した。

初回ということで生徒会の仕事を簡単に紹介する記事を書いた。

あと、みんながあまり知らないボランティア活動のことも。

常盤君が頑張っている写真付きだ。

「こんなこともあろうかと写真を撮っていてよかったぜ」

諏訪会長に誘われて、常盤君は何度か学内のボランティア活動に参加してたんだ。

そのことを書いたってわけ。

普段、愛想があまりよくない常盤君の姿とのギャップで好感度アップ間違いなしだ。

校内の出来事については募集中。

最初だから仕方ないよね。

私たち三人で校内に新聞を貼って回る。

印刷したばかりの新聞はまだほんのり温かい。

三年生がいないからか、校内はすごく静かだ。

「それにしてもこの学校無駄に広いよな」

天聖学園は中高一貫校だが、校舎は別々。

中等部の校舎だけでも四階建てである。

「公立の中学校ならこんなに広くなかったぜ」

私が通っていた青葉小と北小なら別々な中学校に通っていたはずだ。

天聖学園に来なかったら常盤君とは出会うことがなかった。

「二人はどうしてこの学校に来たの?」

「北小って荒れてる学校で有名だろ? だから親が行けってうるさかったんだよ」

「俺も似たようなもんだな」

北小の生徒とは絡むなってお母さんからよく言われていた。

「二人も小学校の時は荒れてたの?」

「んー、どうだろうな。他の奴らに比べたらずいぶんましだと思うけど」

ぶっきらぼうな表情のまま、常盤君が校内新聞を貼っている。

表情こそ少し怖いけど本を読んでいたり穏やかで優しいところがいっぱいある。

小学校の常盤君を想像したらなんだかおかしくなってきた。

「言っとくけど俺は不良じゃないからな」

「はいはい、そうですか」

「全然信じてねーだろ」

「だって常盤君、顔怖いんだもん」

「こう見えても将貴は小学校の頃、俺より真面目だったんだぜ」

へえ、意外。

やっぱり怖いのは見た目だけなんだ。

「将貴は俺たちの小学校で成績トップだったんだ」

「ま、ここにきたところで特別枠って馬鹿にされるだけだったけどな」

小学校のイメージだけで勝手に判断される。

常盤君も塩田君も、色々なことを乗り越えてここまできたんだね。

「将貴はさ、俺たち北小の希望なんだ」

常盤君の強い決意がじわっと胸に広がる。

周りの人のことを考えて、人知れずに行動できる。

そして自分以外の人のこともちゃんと考えられる。

この人を次の生徒会長にしたい。

そしたらこの学校はもっと良くなるに決まっているよね。

「常盤君は私たち特別枠の希望だよ」

「勝手に言ってろ」

そう言いながら、常盤君の声がいつもより高かった気がした。

「さ、明日が楽しみだな」

新聞を読んだ人が常盤君のことを見直しますように。

そう祈りながら、生徒会室に向かって歩き出した。