四月、春、進級!
春の心地いい風に体が包まれる。
穏やかな日差しに照らされて心も体もウキウキしちゃう。
私、平井舞奈《ひらいまな》は今日から私立天聖学園中等部の二年生。
私の通う天聖学園はまだ開校三年目の新設校なんだ。
セレブが通う、超超スペシャルな学校なんだよ。
ふつうの家庭で育った私が通うような学校じゃないんだけど。
実はこの学校、「地域活性化プロジェクト」の一環で学校から半径二キロ圏内にある小学校の卒業生を特別に採用する制度があるの。
ためしにその制度に応募したら、たまたま採用されちゃったってわけ。
学内での学力、人柄での選考に、面接もあったりであの頃はバタバタしてたな。
ちなみに入学した生徒の評価で各小学校ごとの採用数も決まるの。
だから中学生になってからもうかうかできないんだな、これが。
おっと、こうしちゃいられない。
ホップ、ステップ、ジャンプで階段を駆け上がる。
二年生になったら教室は三階に移動だ。
三階には生徒会室だってあるんだよ。
大人の階段を一段高く上がった気分。
どうしてこんなにテンションが高いかって?
それはね、今日はクラス替えがあるんだ。
「うわ、もうみんな集まっている!?」
三階に着くと、新しいクラスが発表された紙の前に生徒がずらりと集まっていた。
一年生の時のクラスも楽しかったけど、私には願っていることがある。
「舞奈、やっときた」
友達の咲良《さくら》と姫華《ひめか》がニコニコしながら手を振っている。
咲良とは小学校の頃からずっと同じクラスで仲良しなんだ。
天聖学園に通う数少ない同じ小学校出身者でもある。
姫華とは中一の時に同じクラスになったんだ。
普通枠でほわわんとしてて、いかにもお嬢様って感じ。
「私たち二組。今年も同じクラスだよ」
「ちょっと、先に言わないでよ」
もう、せっかく自分の名前を探すの楽しみにしてたのに。
でも、いいんだ。
実は探したい人はもう一人いるの。
同じクラスになったらいいんだけど。
「ごめんね、道をあけてくれないかな」
その声に合わせるように名簿の前にいた人たちがずらっと避ける。
トロンと女子生徒の目にハートマークが浮かび上がる。
一色光河《いっしきこうが》君が颯爽と廊下を歩いていた。
「やだ、一色君だ」
「今日も超かっこいい」
茶色がかった綺麗な髪に目鼻立ちの整ったキリッとした顔。
学園トップクラスのイケメンだ。
イケメンな上に成績はいつも学年トップで頭もいい。
女子から大人気なんだよね。
二人いる副生徒会長の一人で、次期生徒会長なんて噂までされちゃっている。
「今年は一組か」
そう呟くと周りにニコッと太陽みたいな笑顔を向けて、一組の教室に入って行った。
このキラキラの笑顔がたまらなくかっこいいんだよね。
「あーあ、一色君と同じクラスになれなかった」
咲良と姫華はガッカリ顔だ。この二人も一色君の大ファンなんだよね。
一色君はすごくかっこいい。
でも私の憧れている人は一色君じゃない。
「やばい、そろそろ教室に入らないと」
「待って、私まだクラスの表、見てないんだけど」
咲良と姫華に押されるように二年二組の教室に中に入る。
クラスの半分以上は知らない人ばかり。
ピカピカの鞄にキラキラのアクセサリー。
相変わらず教室の中は高貴な香りが漂っている。
やっぱりセレブの人たちは違うよなーって思い知らされちゃう。
ごんっと体が何かにぶつかった。
「ごめんごめん、人がいるの気づかなかった」
男子生徒がそう言って笑いながら歩き出す。
私と咲良みたいな特別枠の生徒はすごく少数派。
普通枠のセレブな生徒からこうやって冷たい扱いをされることも少なくない。
「本当ひどいわよね。許せないわ」
心配した顔で姫華が私のことを気にしてくれる。
セレブな人がみんな冷たいわけじゃないってこともちゃんとわかっているよ。
「ねえ、そろそろ始まるよ!」
咲良に言われて時計を見る。やばい、担任の先生がやってきちゃう!
彼の姿は見当たらない。今年も同じクラスになれなかったのかな。
「今日から君たちの担任になる葉山《はやま》です。一年間よろしく」
葉山先生はまだ二十代。学校の中で一番若い先生で有名なんだ。
担当教科は数学。あと、生徒会の顧問もしているんだよね。
「それじゃあ、出席を取るぞ」
葉山先生がそう言った瞬間、ガラッと教室のドアが開いた。
「おはようございます、葉山先生」
きゃーっと教室の中に女子たちの黄色い声がこだまする。
嘘でしょ。信じられない。
心臓がドキドキする。
まさか、同じクラスになれるなんて。
キリッと整った眉毛。スッと高い鼻。
常盤将貴《ときわまさき》君が私たちの二年二組の教室に入ってきた!
「俺の席は……ここか」
常盤君の教室の中を歩く足音が心地よいリズムとなって聞こえる。
やっぱりこれは夢じゃない。
憧れの常盤君と同じクラスになれたんだ!
「常盤君、今日もすごくかっこいい」
「同じクラスになれたなんて超幸せ」
やっぱり女子人気高いよね。
それもそのはず。常盤君は一色君と並ぶもう一人の副生徒会長。
成績は一色君には負けるけど、歴史は学年一位なんだよね。
一色君が王子様タイプなら、常盤君はちょい悪風のワイルドタイプ。
天聖学園の女子は一色君派と常盤君派の二つに分かれている。
そして、私は大々々の常盤君派です!
「常盤、初日からギリギリだぞ。明日からはもっと早く学校に着くように」
「はーい、気をつけます」
このちょっと悪そうな感じがたまらないんだよね。
でもね、知っているんだ。常盤君が本当はすごく優しいってこと。
学校の花壇に水をあげたり、落とし物を一緒に探してあげたり。
そういうさりげない優しさを何回も見たことがあるんだ。
やばい。ドキドキが止まらない。
こんな調子で私、大丈夫かな?
春の心地いい風に体が包まれる。
穏やかな日差しに照らされて心も体もウキウキしちゃう。
私、平井舞奈《ひらいまな》は今日から私立天聖学園中等部の二年生。
私の通う天聖学園はまだ開校三年目の新設校なんだ。
セレブが通う、超超スペシャルな学校なんだよ。
ふつうの家庭で育った私が通うような学校じゃないんだけど。
実はこの学校、「地域活性化プロジェクト」の一環で学校から半径二キロ圏内にある小学校の卒業生を特別に採用する制度があるの。
ためしにその制度に応募したら、たまたま採用されちゃったってわけ。
学内での学力、人柄での選考に、面接もあったりであの頃はバタバタしてたな。
ちなみに入学した生徒の評価で各小学校ごとの採用数も決まるの。
だから中学生になってからもうかうかできないんだな、これが。
おっと、こうしちゃいられない。
ホップ、ステップ、ジャンプで階段を駆け上がる。
二年生になったら教室は三階に移動だ。
三階には生徒会室だってあるんだよ。
大人の階段を一段高く上がった気分。
どうしてこんなにテンションが高いかって?
それはね、今日はクラス替えがあるんだ。
「うわ、もうみんな集まっている!?」
三階に着くと、新しいクラスが発表された紙の前に生徒がずらりと集まっていた。
一年生の時のクラスも楽しかったけど、私には願っていることがある。
「舞奈、やっときた」
友達の咲良《さくら》と姫華《ひめか》がニコニコしながら手を振っている。
咲良とは小学校の頃からずっと同じクラスで仲良しなんだ。
天聖学園に通う数少ない同じ小学校出身者でもある。
姫華とは中一の時に同じクラスになったんだ。
普通枠でほわわんとしてて、いかにもお嬢様って感じ。
「私たち二組。今年も同じクラスだよ」
「ちょっと、先に言わないでよ」
もう、せっかく自分の名前を探すの楽しみにしてたのに。
でも、いいんだ。
実は探したい人はもう一人いるの。
同じクラスになったらいいんだけど。
「ごめんね、道をあけてくれないかな」
その声に合わせるように名簿の前にいた人たちがずらっと避ける。
トロンと女子生徒の目にハートマークが浮かび上がる。
一色光河《いっしきこうが》君が颯爽と廊下を歩いていた。
「やだ、一色君だ」
「今日も超かっこいい」
茶色がかった綺麗な髪に目鼻立ちの整ったキリッとした顔。
学園トップクラスのイケメンだ。
イケメンな上に成績はいつも学年トップで頭もいい。
女子から大人気なんだよね。
二人いる副生徒会長の一人で、次期生徒会長なんて噂までされちゃっている。
「今年は一組か」
そう呟くと周りにニコッと太陽みたいな笑顔を向けて、一組の教室に入って行った。
このキラキラの笑顔がたまらなくかっこいいんだよね。
「あーあ、一色君と同じクラスになれなかった」
咲良と姫華はガッカリ顔だ。この二人も一色君の大ファンなんだよね。
一色君はすごくかっこいい。
でも私の憧れている人は一色君じゃない。
「やばい、そろそろ教室に入らないと」
「待って、私まだクラスの表、見てないんだけど」
咲良と姫華に押されるように二年二組の教室に中に入る。
クラスの半分以上は知らない人ばかり。
ピカピカの鞄にキラキラのアクセサリー。
相変わらず教室の中は高貴な香りが漂っている。
やっぱりセレブの人たちは違うよなーって思い知らされちゃう。
ごんっと体が何かにぶつかった。
「ごめんごめん、人がいるの気づかなかった」
男子生徒がそう言って笑いながら歩き出す。
私と咲良みたいな特別枠の生徒はすごく少数派。
普通枠のセレブな生徒からこうやって冷たい扱いをされることも少なくない。
「本当ひどいわよね。許せないわ」
心配した顔で姫華が私のことを気にしてくれる。
セレブな人がみんな冷たいわけじゃないってこともちゃんとわかっているよ。
「ねえ、そろそろ始まるよ!」
咲良に言われて時計を見る。やばい、担任の先生がやってきちゃう!
彼の姿は見当たらない。今年も同じクラスになれなかったのかな。
「今日から君たちの担任になる葉山《はやま》です。一年間よろしく」
葉山先生はまだ二十代。学校の中で一番若い先生で有名なんだ。
担当教科は数学。あと、生徒会の顧問もしているんだよね。
「それじゃあ、出席を取るぞ」
葉山先生がそう言った瞬間、ガラッと教室のドアが開いた。
「おはようございます、葉山先生」
きゃーっと教室の中に女子たちの黄色い声がこだまする。
嘘でしょ。信じられない。
心臓がドキドキする。
まさか、同じクラスになれるなんて。
キリッと整った眉毛。スッと高い鼻。
常盤将貴《ときわまさき》君が私たちの二年二組の教室に入ってきた!
「俺の席は……ここか」
常盤君の教室の中を歩く足音が心地よいリズムとなって聞こえる。
やっぱりこれは夢じゃない。
憧れの常盤君と同じクラスになれたんだ!
「常盤君、今日もすごくかっこいい」
「同じクラスになれたなんて超幸せ」
やっぱり女子人気高いよね。
それもそのはず。常盤君は一色君と並ぶもう一人の副生徒会長。
成績は一色君には負けるけど、歴史は学年一位なんだよね。
一色君が王子様タイプなら、常盤君はちょい悪風のワイルドタイプ。
天聖学園の女子は一色君派と常盤君派の二つに分かれている。
そして、私は大々々の常盤君派です!
「常盤、初日からギリギリだぞ。明日からはもっと早く学校に着くように」
「はーい、気をつけます」
このちょっと悪そうな感じがたまらないんだよね。
でもね、知っているんだ。常盤君が本当はすごく優しいってこと。
学校の花壇に水をあげたり、落とし物を一緒に探してあげたり。
そういうさりげない優しさを何回も見たことがあるんだ。
やばい。ドキドキが止まらない。
こんな調子で私、大丈夫かな?


