怪盗が最後に盗んだもの

フローレンスは虚ろな目でジョディを見つめている。ジョディは胸が締め付けられる感覚を覚えながら、背の低い彼女の目線に合わせて自己紹介をする。

「フローレンス様、初めまして。ジョディ・ハドソンと申します。怪盗シャハル対策のため、この屋敷の警護を担当させていただきます」

「……はい。よろしくお願いします」

か細い声でフローレンスは言う。すると、「挨拶が済んだならお前はもう屋根裏に戻れ!!」とアーサーがフローレンスを怒鳴り付ける。ジョディはアーサーの方を向き、口を開いた。

「フローレンス様も狙われている可能性が高いのです。同じ空間にいた方が安全です」

「そんな小汚い娘にこの空間にいてほしくないのよ!!」

エリザベスが見下したような目をフローレンスに向ける。フローレンスはゆっくりと俯いていった。ジョディは唇を噛み締め、アーサーとエリザベスを説得する。

そして何とか屋根裏部屋ではなく、大広間がある一階の一室にフローレンスがある許可を貰うことができたのだった。