怪盗が最後に盗んだもの

ジョディはそう呟き、スプリング通りに向かった。



スプリング通りは、ジュニパー国の富裕層が暮らしているところである。右を見ても左を見ても大きな屋敷が立ち並んでいる。その中の一つがオルコット伯爵の屋敷だ。

オルコット伯爵の屋敷の前では、多くの捜査員がすでに出入りしていた。全員ジョディの部下である。ジョディが「すまない。少し遅れた」と声をかけると、部下たちは少し驚いた様子だった。

「あれ?ハドソン刑事、歩いて来られたんですか?」

「瞬間移動魔法使わなかったんですか?」

「最近運動不足だったから歩いてみただけだ」

ジョディはそう言い、屋敷の中へと入る。屋敷の中にも大勢の警察官が警戒した様子で見回っていた。ジョディは迷うことなく家族が集まっている大広間へと向かう。

「失礼致します。刑事のジョディ・ハドソンです」

「おお、これはこれは刑事さん……。アーサー・オルコットです」

革張りのソファから高価なスーツを着た中年男性が立ち上がる。アーサー・オルコット伯爵だ。アーサーの隣には夫人であるエリザベスがおり、二人の前には十六歳の娘であるレジーナが座っている。エリザベスもレジーナも美しいドレスと宝石で着飾っていた。