紙にはこう書かれていた。
・ヒロインもも・ピーチと仲良くなること
・バットエンドを避けること
・アク・ニャンとはあまり関わらないこと
リン子は紙を忘れないようにドレスのポケットにしまうと、再びベットに移動した。
リン子が前世でハマっていたゲームは、『ゆるオリメモリアル』という名前の乙女ゲームだった。(今いる世界)
そこで自分はもも・ピーチとなり進んでいくわけだが、悪役のリンルン・ブルー(今のリン子だ)が意地悪をしてくるのだ。それが騎士でありもも・ピーチの婚約者のアク・ニャンにバレ、処刑されてリンルンはいなくなってしまう。そのあとはめでたくもも・ピーチとアク・ニャンが結ばれ、ハッピーエンド…という流れだ。
元々リンルンがもも・ピーチに意地悪している理由は、アク・ニャンが好きだったからなのだ。
でも当然アク・ニャンはもも・ピーチしか愛しておらず、嫉妬心でやったというもの。
やっていた当時はリン子もアク・ニャンが好きだったが、今の状況となると敵だ。
ゲームにはいくつかのルートがあり、もも・ピーチにやられるというパターンもある。
それを避けるためにも、リン子はもも・ピーチと仲良くなるのが一番だと感じた。
もうすぐある舞踏会で2人は婚約を発表する。
リンルンが意地悪をし始めたのがこの後だった。だからまだ間に合う。
できるだけアク・ニャンとは接しないようにし、もも・ピーチとは接するようにする。
それが最善だと思われた。
だが、予想もしない相手がのちに現れるのだった。
ベットに横になったリンルンは、だんだんと眠たくなってきた。

リン子が目を覚ましたのは、お手伝いにお風呂で呼ばれた時だった。
重たい体をゆっくりと起こすと、ベットから離れた。
お風呂場はものすごく豪華だった。
前世のリン子も豪華なお風呂に入っていたが、さらに豪華だった。
床は大理石だし、お風呂はジャグジーのようだった。
それは前世のリン子の家も同じだったが、壁に絵画のようなものが飾られていた。
さらにところどころに宝石があり、お風呂はフローラルな香りが漂っていた。
なんだか疲れたリン子は、暖かいお湯に浸かると一気に疲れが取れた気がした。
あんまり長風呂するわけにもいかないので、10分くらいで出た。
お風呂から出るとさっぱりとして気持ちよかった。
リン子は用意してあったドレスに着替え、部屋に戻った。
お手伝いは夕飯の時にまた来ると言い、部屋を出ていった。
リン子は部屋でまったりと過ごした。
物があまりない部屋だったが、テレビがあったのでテレビを見ていた。
すぐに夕飯で呼ばれ、リン子はテレビを消して部屋を出た。
広間では大きなクロスのかかったテーブルに、様々な料理が並んでいた。
おなかが空いていたリン子は、勢いよく頬張った。
「お嬢様、もうすこし礼儀よく…」
カールに注意され、リン子は恥ずかしくなった。
テーブルを囲んでたのはリン子の親、そしてそういえばいたわと思った兄のアニルン、お手伝いたちだった。
おなかが空いていたからか、リン子はあっという間に食べおわった。
「明日の舞踏会がんばってね。」
帰りぎわ、ゆっくりとママルンが言った。
「…ええ、お母様。」
リン子はお辞儀して言った。
必ずもも・ピーチのハートを奪ってみせるわ！…とは言わなかった。
部屋に戻ると、リン子は明日に備えて早めに寝た。