「おまたせ」

 見上げた先に秀麗な笑みを湛えた男性。背が高くスタイルもよく非の打ち所がない彼を見て、体温が一気に上昇した。足の冷えなんて全然気にならないレベルで。

「いえっ……! 真宙さんこそ、早かったですね」

 慌てて本を伏せて腕時計を確認すると、まだ待ち合わせの十五分前。

「璃子さんなら十分前に着いていそうだなと思ったから。でも、先回りとはいかなかったな」

「気にしないで時間通りに来てください。相手より先に着こうとすると、待ち合わせ時間がどんどん早くなっていきますから」

「そうさせてもらうよ。君も無理はしないで」

 穏やかにそう言って、脱いだコートを椅子の背もたれにかける。

 首がすらりと長い彼は、ブラックのタートルネックが驚くほどよく似合っている。

 ゆったりとしたニット素材ではあるが、長い腕と広めの肩幅、逆三角形を描くウエストラインがはっきりとわかって、モデルのように優美だ。

 席に腰を下ろしながら、にっこりと微笑んでくる彼。

 涼しいのに甘さを感じられる目元、すっと通った鼻筋、ほどよい膨らみを持つ唇は、俗にいう黄金比で配置され、科学的に証明されたイケメンだ。

 自分にはもったいないくらい素敵な人、そんなことを考えながらぼんやりとしていたら、手元の本をしまうことすら忘れていた。

「なにを読んでいるのか、聞いてもいい?」