私、道根(みちね)璃子は今日、珍しくおめかししている。

 ホワイトのニットカーディガンにネイビーのフレアワンピース、フェミニンなヒールパンプス。胸まである髪は下ろして緩く巻いた。

 普段はパンツルックで、髪もひとつに括っている私がなぜこんな格好をしているのかといえば、父から紹介された素敵な男性と三回目のデートだから。

 待ち合わせのカフェに張り切って三十分前に到着してしまった私は、カウンターでラベンダーラテをオーダーし受け取った後、窓際の席に着いた。

 辺りをきょろきょろと見回し、まだ彼が来ていないのを確認すると、バッグから手鏡を取り出す。手で前髪を少しだけ持ち上げて、今日の自分の顔と向き合った。

 ワンピースの色に合わせて新調したアイスブルーのアイカラーと淡いピンクのリップは、似合っているのかいないのか自分ではよくわからない。

 普段はブラウンを基調としたビジネスライクなメイクをしているから、鏡の中の自分がまるで別人に見える。

 大人っぽく、エレガントに見えているといいのだけれど……。

 というのも、二十七歳の私に対して彼は三十三歳。デートの相手は六歳も年上の大人の男性なのだ。

 少しでも釣り合いたいと背伸びをしてみたものの――チェアの下を覗き込んで、なにも物理的に背伸びをする必要はなかったかな?と後悔。ヒールが八センチのパンプスはバランスが悪くて歩きにくい。