こんな状況にあれば、たとえ誰だとしても心を完全に閉ざしてしまっても、仕方のない状況にある。
これまでに彼自身が選んだことなど、何ひとつとしてないというのに。
「……なんだ。急に様付けなどと。どうせお前とて、親同士が勝手に決めた婚約者だから、嫌々ながらもここへ来ているくせに」
整った顔を歪めて、ウィリアムは言った。
それはこの身体の持ち主モニカが、ウィリアムへと言っていたことだった。
『本当はこんなところ来たくないのに、婚約者としての義務で仕方なく』と、そう何度も何度も数えきれないほどに言った。
不快感を全面に押し出されて、悪役令嬢モニカが嫌われていることを、ひしひしと感じた……それもそうだ。
モニカは会うたびに使用人にだって『王太子だというのに、どうせ即位は出来ない』と、馬鹿にされている彼のことを蔑んだり揶揄ったり、ろくに話もしていないのにウィリアムの人格すら否定するばかり。
そんな婚約者モニカが、唯一彼と話すことの出来る人物だ。なんなら、彼を救うヒロインキャンディスが現れたとしても、ウィリアムを庇う彼女をも一緒に虐める役目。
今の私は彼にこうして嫌われてしまうのも、無理もない話なのだ。
悪役令嬢の……役割にふさわしく、ただそこに産まれて来ただけの可哀想な王子様を、不幸にして。
これまでに彼自身が選んだことなど、何ひとつとしてないというのに。
「……なんだ。急に様付けなどと。どうせお前とて、親同士が勝手に決めた婚約者だから、嫌々ながらもここへ来ているくせに」
整った顔を歪めて、ウィリアムは言った。
それはこの身体の持ち主モニカが、ウィリアムへと言っていたことだった。
『本当はこんなところ来たくないのに、婚約者としての義務で仕方なく』と、そう何度も何度も数えきれないほどに言った。
不快感を全面に押し出されて、悪役令嬢モニカが嫌われていることを、ひしひしと感じた……それもそうだ。
モニカは会うたびに使用人にだって『王太子だというのに、どうせ即位は出来ない』と、馬鹿にされている彼のことを蔑んだり揶揄ったり、ろくに話もしていないのにウィリアムの人格すら否定するばかり。
そんな婚約者モニカが、唯一彼と話すことの出来る人物だ。なんなら、彼を救うヒロインキャンディスが現れたとしても、ウィリアムを庇う彼女をも一緒に虐める役目。
今の私は彼にこうして嫌われてしまうのも、無理もない話なのだ。
悪役令嬢の……役割にふさわしく、ただそこに産まれて来ただけの可哀想な王子様を、不幸にして。



