【コミカライズ】仕事の出来る悪役令嬢、薄幸王子様を幸せにアップグレードしておきました。

「はいっ……ありがとうございます」

 無言でその後の作業を終え、長かった一人での|仮縫い(フィッティング)も、これでようやく終えることが出来る。

 事前準備として門番に悟られないように布地を小分けにして運んだりと、本当に大変だったけれど……あとは、これを逆に少しずつ運び出して、服を作るメゾンへと送り届けるだけだわ。

「……しかし、最近全然離宮に来なかっただろう。この儀礼服の件が終わったら、元に戻るのだろうな?」

 布を整理して片付けていた私に、着替え終わったウィリアムは確認するように言った。

 このところ、私はメゾンキャローヒルのマダムとの打ち合わせなどに忙しく、なかなか彼には会えて居なかった。

 キャンディスを頑なに拒否するウィリアムには実質話し相手は私しか居ないので、彼もこのところ寂しかったのかもしれない。

「はい。ウィリアム様。そのつもりですよ。私もこのお針子の仕事は楽しかったですが、まだまだ解決せねばならないことがたくさんありますので」

「……そうか。だったら良い」

 ウィリアムは素っ気なく言い、私はそんな彼の態度に違和感を抱いた。