悪役令嬢であるモニカにも、一応はウィリアムを虐める理由は存在する。

 彼女はウィリアムの腹違いの姉、エレイン姫の取り巻きだった。だから、モニカはウィリアムを虐めることこそが、エレインの目的だと自分勝手に勘違いしていた。

 王には現王妃との間にも、第二王子ジョセフが居るのだけど、シュレジエン王国の継承権順位は、産まれて来た順番だと定められている。

 王太子ウィリアムは、身分の低い側妃との間に生まれた……いいえ。生まれてしまった望まれぬ王太子だったのだ。

 実はウィリアムが生まれる少し前に、彼の姉エレイン姫が正妃の子として生まれた。もし、エレイン姫が男の子であったならば、彼の人生はもっと楽で平坦なものになっていたはずだ。

 けれど……現実にIFは存在しない。現に、ウィリアムは王太子だ。

 側妃だったウィリアムの母は、身分が低く気の強い性格でもなかった。周囲からにじりよるような重圧に耐えられなくなり、早々に亡くなり、息子ウィリアムはただ一人だ。

 幼い頃から、たった一人で戦っている。

 広い王宮の中で権力者である父王と王妃に、邪険にされながらも孤独に生きて来た。