報告には客観的事実のみで、当事者の感情を入れてはいけないのに……いいえ。これは、仕事の話ではないわ。

「……え? どういうことなの?」

「知りませんよ! どうにかして、説得してください! モニカにしか、自分の髪は触らせないって!」

 身体をくねくねさせて駄々をこねるキャンディスを見て、前世の竹本さんも確かこうだった……と、大変だったあの頃と既視感。

 彼女がやらかしたあれこれの業務の尻拭いで、終電を逃した夜も数知れずだったものだ……人って生まれ変わってもどこまでも変わらないものね。

 変なところで感心した私が頷くと、キャンディスは涙目で訴えた。

「もうっ! 山下さん。そんな自分は無関係だしみたいな顔して……ウィリアムにちゃんと言ってくださいよう!」

 私はべそをかくキャンディスに促されてウィリアムの元へ向かえば、彼は腕を組んで本当に不機嫌な様子だった。

「おい。俺の婚約者はお前だろう。なんであの女を、こちらへと寄越すんだ。おかしいだろう。理解出来るように説明しろ」