エレインは意地悪い性格で短絡的な思考をする弟の婚約者モニカを、信用ならないと疑い、それでもモニカを使って弟のために何が出来るかと試行錯誤していたのだ。

 ウィリアムがそんな優しい姉の思いを知ったその時には、エレインは暗殺されて故人になっている。彼は『お礼も言えなかった』と、悲しみに打ちひしがれ涙を流すしかなかった。

 もちろん。私のここ最近の頑張りから身ぎれいになって、すっかり可愛くなったウィリアムに、そんな重い悲しみを与える訳にはいかないので、エレインの死については私が事前に回避しておこうと思っている。

 ……というか、ウィリアムに関する悲劇はすべて。

「はっ……姉上が……? そのようなことがあるはずがないだろう。俺は嫌われている……姉上の立場を思えば、それは無理もない話だ。あの人を恨んではいない」

 まさか。ウィリアムを嫌っているなんて、そんな訳がない。エレインも可哀想なウィリアムになんとか優しくしてあげたかったけど、彼も知っての通り彼女の状況がそれを許さなかった。