母の死後、立場が一気に悪くなり何年も身支度などの世話をしてくれる使用人が居ずに、これまで身支度を見よう見まねでするしかなかったウィリアムは、自分の髪の適切な手入れ法を知らないだけなのだ。

 私は誰かに何かを教えることには慣れているし、なんなら優秀なウィリアムは誰にも教わることなく本を読んだだけで、すべてを学んだ人だ。

 きっと、すぐに自ら出来る手入れ方法を、すぐに習得してしまうはずだ。

 私が彼の髪の毛の長さを整えつつそう言うと、ウィリアムは驚いた表情で私を見た。

「えっ……待ってくれ。お前が俺と風呂に一緒に入るのか?」

「あ。そうですね! その方が、やり方を伝えやすいし、わかりやすいかも知れないです。普段から、乾燥させないように香油を桶に一滴だけ垂らす方法もあるんですよ。付けすぎては、逆効果になってしまうかもしれないですけど……」

 髪に香油を付けすぎて海藻みたいなベタベタ髪な王子様を脳内で想像してしまって、私はそれは絶対に嫌だと思ってしまった。

 周囲から勝手な期待をされてはガッカリされて、美形の王子様も何かと大変だわ。