頭の上にあった大きな毛玉を、ザンっと音をさせて鋏で切り取り払うと、綺麗な黒髪がふさっと彼の襟足にかかった。

 身繕いする物だけは、王族として最高級のものを使っているのか、高級石けんの良い匂いがした。

 ……いいえ。それだって当たり前のことよ。だって、ウィリアムは間違いなく王の血を受け継ぐ王族なのだから。

 それも……将来は王位を受け継ぐ権利を持つ王太子よ。

「軽い」

 ウィリアムは毛玉のなくなった自分の頭を触って、呆然として呟いた。

 髪の一本一本は羽根のように軽いとは言え、あれだけ寄り集まれば重かったのかも知れない。

「ええ。そうでしょうね。あんなにも大きな毛玉があったのですもの。けれど、ウィリアム様の髪は柔らかくて癖があって、季節的に空気が乾燥しているので、香油を付けないとまた毛玉が出来てしまうと思います。一度、お風呂に入りましょう。私がこういった髪の手入れを基本から、教えてあげますから」