『人妻の過去』

仁君は、彼女の浴衣姿を褒めちぎる…。


その度に…アタシの胸はひどく痛んだ。


アタシだって…!


アタシだって浴衣姿を見せたかったよ!!


花火大会の為に仁君にプレゼントした仁平。それを着た、仁君の隣を


浴衣を着て歩きたかった…。




仁君の学校の友達が、花火が終わったら一緒に飲みに行こうと誘ってくれた。


でもそれも…


門限があってうるさい親がいるアタシには


行けなかった…。




花火の終わりを知らせる、連発の大きなナイアガラ…



どうか…


散らないで…。


こんなに綺麗なのに…


消えて無くなってしまうなんて…


この季節にしか見れない。


特別に綺麗で…はかない大輪…


生暖かい風が、


火薬の臭いをのせてきて…


肌がジトっと汗ばむ中…


散っていく花火を見ることが出来なくて


アタシは目を閉じた。