『人妻の過去』

さっきまでとは違った、事務的な…丁寧な口調でそう言った。



費用は約10万円…



どうにか間に合う範囲だった。



1人の人間を殺すのに10万円…。



なんて安い。



手術の予約は…月が変わって希望休が取れる8月1日にした。



あと2週間…



あと2週間で…



お腹の赤ちゃんとサヨナラ。



アパートに帰ると仁君はバイトに出掛けた直後だったようだ。



お風呂場からはまだ湯気が出ていて、湿ったバスタオルが床に投げてあった。



アタシは携帯をとって仁君にメールする。



『優子から教えてもらった病院、休診日だった。アパートの近くで別の病院を見つけて、手術の予約を入れて来た。8月1日…バイト、休み取ってね。』



仁君からすぐに電話が来て、



旅行で休みをもらうから、8月は希望休を取れないと言われた。



旅行は…予定が変わって8月2日から2泊3日。



優先はどっち?!



そう言いたかったけど…



今、仁君に逃げられたら終わりだ。



そう自分に言い聞かせて



『バイトまで、居てね』



電話を切ったあと,メールを入れた。