〇校門前
家族は先に駐車場にいったので向かうと、校門前に見覚えのあるシルエットを見つける。
歌音は目を見開き、小走りに近寄った。
歌音「――陽くんっ!」
そこにいたのは息を切らせた陽暁だった。
陽暁も歌音を見つけるとやたらと優しい笑みを浮かべる。
陽暁「ノンちゃん」
陽暁の元にたどり着くと、その勢いのまま胸に飛び込む。
陽暁は受け止めて、ぎゅっと優しく包み込んだ。
歌音「――どうして、ここに?」
陽暁は国際コンクールに出るため海外へ向かうはずだった。
それが今日、卒業式の日だったはずだ。
それなのに、なぜ。
陽暁「……やっぱり、どうしてもお祝いしたくて、抜け出してきちゃった」
どうやらスケジュールを無理やり空けて走って来たらしい。
この後十分もすれば、空港に向かわなければならないという。
歌音「そんな無理やり……。大丈夫なの?」
陽暁「まあ何とかなるさ。それよりも、会えてよかった」
陽暁は歌音の肩に手を置き、眼を合わせる。
陽暁「卒業おめでとう。そして、大学合格おめでとう。歌音ならできると思っていた。これも全部、歌音が諦めないで頑張り続けたからだよ。自信を持ってね」
嬉しくて、歌音の目にジワリと涙が滲む。
歌音「うん、ありがとう」
陽暁はその瞼に口づけた。
陽暁「僕も頑張ってくるよ。……だからさ、ノンちゃん」
陽暁はふと真剣な顔をした。
そして歌音の手をとる。
陽暁「僕もまだ未熟だし、君を危険な目に遭わせてしまうこともあるかもしれない。それでも僕は……どこにいても君への気持ちは変わらないから」
そっと離された左手の薬指にはシルバーのリングが嵌められていた。
歌音「…………これ、って」
陽暁は照れたように笑った。
陽暁「今はまだこんなものしか用意できなかったけど、僕の気持ち。受け取ってくれると嬉しいな」
優しい笑みを受け、歌音は陽暁の胸に飛び込んだ。
歌音「もちろん、嬉しいっ!」
抱きしめられ、幸せそうに笑いあう。
やがて抱き上げられるとキスが贈られた。
どこからか、カノンが聞こえてくる。
(歌音のモノローグ)
私と同じ名前の曲。
どこまでもどこまでも続いていくかのような幸せの曲。
この曲のように、私もずっと歩いていこう。
何があっても止まらず、一歩ずつ。
きっと、陽くんとならできるはずだから――。
(モノローグ終了)
fin.



