〇高校・卒業式&校庭でワイワイしている
卒業証書を受け取り、友人たちと涙ながらに話している歌音。
何なら担任が一番号泣しており、生徒たちは泣きながらも笑っている。
クラスメイト全員で写真を撮ったり、もみくちゃになったりした。
虎「いやー、やっぱり寂しいもんだな」
歌音「そうだね……。でも皆希望進路に進めてよかった。虎くんがバンドを組んだことにはビックリだったけど」
虎「なはは! まあオレの音楽性はクラッシックっていうよりはjazzとかポップとかの方が合ってるしな!」
歌音「もう、事前に教えてくれてもよかったじゃない」
虎「いや~。驚かせようと思って」
虎は明るい笑みを浮かべ頭を掻いた。
どうやらバンドをしつつ、バイトでお金を溜めながらやりたいことをやるらしい。
歌音「虎くんらしいといえば虎くんらしいけどさ~。……でも応援するよ!」
虎「おう! サンキューな! オレも見雪を応援しているぜ! 頑張ろうな!」
笑い合う二人。
しばらく話すと、大きく手を振り、それぞれの道へと踏み出した。
歩いていると、後ろから衝撃が走り振り返る。
歌音「みりあちゃん」
そこには少し潤んだ目をしたみりあが立っていた。
みりあ「卒業おめでとう」
歌音「ありがとう。みりあちゃんとももう学校で会えなくなると思うと寂しいね」
みりあ「っ」
歌音「あらあらあら」
そう言うとみりあはどんどん涙を溜めていった。
歌音はそれをハンカチで拭いてやる。
歌音(出会ったときと印象とだいぶ違ったなぁ)
初めてみりあと会ったとき、高飛車なお嬢様かと思った。
けれど実は心配性で、不器用に優しくて、おちゃめな人だった。
歌音「ねえ、みりあちゃん」
みりあ「?」
歌音「私ね、みりあちゃんに出会えてよかったよ。いっぱい助けてもらったし、みりあちゃんがいてくれたから自分の想いに区切りをつけることができた。だからありがとう」
花が咲くように笑いかける。
歌音「学校では会えなくなっちゃうけど、私、みりあちゃんとまた会いたい。ずっと仲良くしたいんだ」
みりあ「……そんなの」
歌音「え?」
小さくつぶやかれた言葉は歌音には聞こえなかった。
聞き返すと、キッとした表情になる。
みりあ「そんなの、わたしも同じだって言ったの!」
みりあは歌音の袖をきゅっと掴んで赤い顔で叫んだ。
素直じゃないみりあの、精いっぱいの素直な気持ちらしい。
歌音「……うん。ありがとう」
歌音はぎゅっとみりあを抱きしめた。
みりあは歌音の腕の中で涙をこぼしたが、やがて赤い顔を向けた。
みりあ「……わたし、奏様のこと諦めないから」
歌音「ん?」
みりあ「……だからあなたともまた会えるでしょ?」
一瞬驚いた歌音だったが、すぐに優しくほほ笑む。
みりあはプライドがジャマして素直になれないだけで、「また会いたい」と言ってくれているのだと分かった。
歌音「うん。また会おうね」
みりあ「ふん! せいぜい元気でいなさいよね!」
歌音「はいはいはい」
みりあは照れくさくなったのか、そう捨て台詞を吐くと走って逃げていった。
その背中を見送り、歌音は校舎を見上げる。
歌音(……いろんなことがあったなぁ)
はじめは陽暁を追って入った。
ただそれだけの理由で選んだ学校だった。
歌音(でも、ここに入ってよかった)
いろんな人と出会って、歌音も変わった。
歌音は満足そうに頷いて校舎に背を向けた。



