〇家の前
初詣から帰ると、父と母が何やらこそこそと外にいるのを見つける。
歌音「ただいま……って、どうしたの?」
母「あら、おかえり。それが聞いてよ! さっきね、めちゃくちゃかわいい子が奏ちゃんを初詣に誘いに来たの!」
歌音「めちゃくちゃかわいい子?」
父「ああ。みりあちゃんって言ってたかな」
みりあの名を聞き、ピクリと反応する。
歌音「みりあちゃん、来てたんだ。お礼言いたかったのに……」
あの事件の際、影で大活躍してくれていたのがみりあだった。
みりあの家は実は探偵事務所を構えていたらしく、陽暁からの依頼で情報を集めてくれていたらしい。
歌音(そんなこと一言も言っていなかったのに……。知らず知らずで守られてばっかりだなぁ)
改めて思う。自分は周りの人たちに恵まれていたのだと。
だからこそ、応援してくれている人たちに恥じるようなことはしないでいたいのだ。
母「もう行っちゃったけど、用事があったの?」
歌音「ううん。また今度にするよ」
母「そう?」
両親はふしぎそうにしていたが、まあいいかと思ったらしい。
すぐに前の話題に戻った。
父「あの奏が女の子に誘われるなんて今までなかっただろ? もうママと大盛り上がりでさ」
母「そうそう。しかも奏ちゃんもため息はついてたけど律儀に準備していたみたいで、脈ありみたいなのよ~! しかも行先がね、恋愛成就で有名な神社なのよ!?」
父と母は手を取り合ってきゃいきゃいと盛り上がる。
母「でも奏ちゃんって素直になれないところあるじゃない? だから私たちでサポートしようかなって!」
歌音「さ、サポート?」
父「進展させたいだろ!? ってことでいってくる!」
歌音「あっ、ちょっと!」
父と母はそのままのテンションで行ってしまった。
歌音(みりあちゃん……外堀から埋めにきたな……?)
みりあの策のうちなのか、それとも単に両親の好奇心が大きすぎるのか。
どちらにしても
歌音「……お兄ちゃん、大変だなぁ」
歌音は同情の眼差しで両親が去った方向を見つめた。
陽暁「音羽さん達も相変わらずだね」
歌音「普段は尊敬できる人たちなんだけど、突っ走っちゃう癖をどうにかしてもらいたいな……」
陽暁「あはは! そこは血筋だからしょうがないよ。ノンちゃんもそういう部分あるしさ」
歌音「うっ、それは、そうなんだけどさ」
歌音はパニックになると突拍子もない行動に出がちな自分のことを思い出し苦い顔になった。
何かと言えば、陽暁に頭突きをしたり、無謀にも男4人にケンカを売ったり、だ。
歌音「……反省しています」
陽暁「まあそんなところも好きだけどね」
からかうように笑う陽暁。
ニヤニヤが隠せていないのでぽこっと叩いてみた。
歌音「もうっ!」
陽暁「あははは!」
やはりからかっていたらしく、じゃれあうように避けたり受け止めたりされる。
そんなことをしていると、陽暁のスマホが通知を告げた。
陽暁「あれ、教授からだ。ちょっと待ってね……っ!」
陽暁はメールを開くとすぐに歌音へと顔を向けた。
その目は輝いていて、なにかいいことが書いてあったのだと容易に予想できた。
陽暁「ノンちゃん! 僕選抜通ったって!」
歌音「!!」
知らせを聞き、歌音も喜色にあふれる。
歌音「すごいすごい! おめでとう!! こうしちゃいられない、何かお祝いを……ケーキでも買ってこよう!!」
とはいえ年末年始に開いている洋菓子店などなく、急遽コンビニのケーキを買いに行ったのだった。



