2度目の初恋はセレナーデのように



 〇神社・早朝(年明けの4日)
 初詣(はつもうで)をしている歌音と陽暁(はるあき)


 お参りがすむと出店にあったお雑煮(ぞうに)を貰い食べている。



 歌音「はあ、あったまるねぇ」
 陽暁「そうだね。でもノンちゃん、本当に身体は大丈夫?」

 歌音「うん。もう全然平気だよ!」


 心配そうに覗き込んでくる陽暁に笑みを向けた。


 そしてちょっと複雑そうな顔になる。


 歌音「それよりもクリスマス一緒にいれなくてごめんね」
 陽暁「ううん。病み上がりでムリさせるわけにはいかなかったからね。本当は年始もまだ休んでもらいたかったけど……」

 歌音「それはさすがに休みすぎだよ」
 陽暁「そう? でもまだ外で過ごすのはやめた方がいい気がするけどなぁ」

 歌音「大丈夫だって」


 陽暁は歌音が寝込んでから、今までよりもさらに過保護(かほご)になってしまった。


 危ない目に遭ってほしくない。健康でいてほしい。

 そんな思いは嬉しいし、すごくよく伝わってくるんだけど……。



 歌音「これじゃあダメ人間になっちゃうよ」


 陽暁は冬休みに入ってからずっと歌音の世話をしていた。

 暇さえあれば会いにくるし、身の回りのお世話をとにかくしたがるのだ。


 陽暁「だってノンちゃんと一緒にいたいんだもん」
 歌音「だもんって」


 眉を下げた歌音に、陽暁は唇をとがらせて抗議(こうぎ)した。

 何というか、子供のようで可愛らしい。
 思わず笑ってしまった。



 陽暁「年末年始の休みが終わったら本格的な入試の季節でしょ? 僕もレッスンが鬼のように入っているし、会えなくなっちゃうじゃないか」
 歌音「それは……まあそうなんだけどさぁ。でもちゃんと休めてるか心配だよ」

 陽暁「それは大丈夫。僕が一番休まるのがノンちゃんのそばだから」
 歌音「そ、そう?」


 そう言われると悪い気はしない。


 歌音「……ならいっか」
 陽暁「そうそう」


 歌音は我ながら単純だなと思いながら残っていたお雑煮の汁を飲み干した。

 陽暁はそれを見て手を差し出す。


 陽暁「寒いし、人ごみだから長居はよくないよね。そろそろ帰ろうか」
 歌音「うん」


 手を繋いで帰り道を歩いていく。


 歌音(陽くんの手、大きくて温かい。やっぱり安心するなぁ)


 繋いだ手から伝わってくる体温すら愛おしいと思う。

 繋げば繋ぐほど離れがたくなってしまうけれど、今だけは……例えもうすぐ離れるのだとしても、今だけは許されるだろう――。