何がなんだかわからなくて呆然とした歌音の横に、陽暁がやってくる。
歌音「陽くん……」
陽暁は無言で歌音の腕を引いた。
ぽすりと陽暁の胸に収まる。
陽暁「……なんであんな危ないことしたの」
歌音「危ないって」
陽暁「男4人に啖呵切っていたじゃないか!」
珍しく声を荒げる陽暁。
陽暁「君が襲われそうになっているところを見て、生きた心地がしなかった。間に合わなかったらと思うと……」
ふと気が付くと歌音を抱きしめる手は震えていた。
その姿は何よりも怖かったのだと伝えてくる。
歌音「……ごめんなさい」
歌音もようやく恐怖が襲ってきて震えて来てしまった。
でも、これだけは伝えておかないと。
歌音「……陽くんのことを悪く言われて、黙っている訳にはいかなかったの」
ただじっとしていられなかったのだ。気が付いたら身体が動いていた。
自分のことを言われてもそこまで怒ることはなかっただろう。
けれど陽暁のことは、自分のこと以上に大切だったから。
泣きそうな陽暁を見たら、歌音まで泣きそうになってしまう。
思わず涙をにじませて謝る。
歌音「ごめ、ごめんなさい」
陽暁「っ! ……もう無茶はしないで。危ない目になんて遭わせたくないんだ」
涙は止まらず、コクリと頷くばかり。
それでも気持ちはちゃんと伝わったのだろう。
抱きしめてくる手の力が強まった。
歌音もそれに応え、陽暁の背に手を回して涙を落とした。
【こうして音大での事件は幕を閉じた。それから数日後のことだ。望月京が逮捕されたとニュースで見かけたのは】



