〇学生棟の外
歌音を待っていた陽暁が手を上げた。
陽暁「ノンちゃん」
歌音「ごめんね陽くん。忙しいのに」
陽暁「ううん。僕がしたいからしているだけだよ」
歌音も一応話し合いの場にやっては来るが、難しい話は分からないため外で待っていることが多い。
さすがに一人でいさせるわけにはいかないと、その間陽暁が歌音についていてくれることになっていた。
陽暁「それで、見つかった?」
歌音「ううん。ごめんね。せっかく陽くんに貰ったのに……」
陽暁「ノンちゃんが謝る必要はないよ。また贈るし、気にしないで」
歌音「……うん」
歌音(陽くんはこう言ってくれるけど……)
歌音としては何とかして見つけたかった。
歌音(だってあれは陽くんの分身みたいなものだから)
歌音(やっぱりあの日歩いたところ探してみるしかないよね)
そんな歌音の様子を読み取った陽暁は、困ったような笑みを浮かべた。
陽暁「やっぱり気になっちゃう?」
歌音「……うん」
陽暁「そっか。なら気がすむまで探してみようか」
陽暁は歌音の手を取って笑った。
歌音「いいの?」
陽暁「いいもなにも、ノンちゃんの執念は知っているからね」
歌音「うっ。た、確かに諦めは悪いけど、執念って」
陽暁「あはは。まあ大事にしてもらっているのは嬉しいし、見つけられたら御の字ってことで」
ということで二人であの日辿った経路を歩いてみる。
歌音「選抜が始まる前にトイレで鏡を見たときはついていたから、その後走った時だと思うんだけど」
陽暁「じゃあ僕こっち探してみるから、ノンちゃんはそっちをみてみて」
歌音「うん」
通路の左右に座って茂みなんかもかき分けてみる。
歌音(ええと、こっちに行ったはずで……あれ?)
そうして探しているとき、ふと目の端にきらりと光を反射するものが見えた。
顔を上げると植え込みの奥から光が届いているらしい。
近寄って見てみると、植え込みの幹らへんに見覚えのあるイヤリングが引っかかっていた。
歌音「あ、あった!! え!? あった!!」
喜色を浮かべた歌音はすぐに植え込みの近くにしゃがみ込む。
泥で汚れてしまっているが、紛れもなく失くしてしまったイヤリングだ。
歌音「陽くん! あった……って」
探すのに夢中になっていたのか、陽暁とはだいぶ離れてしまっていた。
しかも陽暁は歌音とは逆の方向を向いていて声に気が付いていないようだ。
ちらりとイヤリングの方をみる。
植え込みの奥の方にあるが、手を伸ばせば何とか届きそうだ。
歌音「……拾ってから見せたほうがいいよね!」
歌音は再びしゃがんで腕を植え込みへと突っ込んだ。
だが見た目よりも植え込みの中は枝や草が密集していて、なかなかイヤリングに届かない。
歌音は知らず知らずのうちに植え込みの奥に奥に入っていった。
歌音「うう、っく……あともうちょっと! ……よし! とれた! ……って、ん?」
?「~~さ、……だわ」
ふと話し声が聞こえてくるのに気が付く。
普通の話声なら特に気に留めなかったが、何か言い争うような声だったのが気に掛かった。
歌音「……」
それに、なにやら聞き覚えのある声のような気がする。
歌音は気になり、声のする方に近寄っていった。



