2度目の初恋はセレナーデのように



 (視点切り替え・歌音目線)
 それを客席の入口から眺めていた歌音(ぶ厚い毛布に包まれており、みりあに支えられている)。



 歌音(……あ。この曲)


 変更曲に選ばれたのはリストの「愛の夢 第3番」だった。



 甘い感傷(かんしょう)を誘うメロディーが印象的な曲だ。そして



 歌音(陽くんが、一番好きな曲。小さいころからよく聞かせてくれた……)



 陽暁は「愛の夢」を感傷的になりすぎないテンポで奏でる。

 その中に力強さを、身を焦がすような情熱を、そして今を生きろとでもいうかのようなメッセージを込めているのが伝わってくる。


 歌音(これが……)


 会場はあっという間に陽暁の演奏に惹きこまれた。


 そして会場中が感じただろう。
 これが、「ピアノの魔術師・リスト」の再来「久遠陽暁」なのだと。


 歌音(……やっぱり、陽くんはすごいや)


 音に込められた情熱が聞く人にここまで伝わるだなんて。


 聞くだけに収まらない演出が、惹きこんでしまうほど鮮烈な光景が、五感のすべてを刺激する演奏が。
 人の目に留まらないわけがない。


 歌音(そんな陽くんが、大好き。……だから)


 歌音は涙ぐみながらも決意のこもった目をした。


 歌音(私にできるのは、背中を押してあげることだけだ)


 心を、覚悟を決めたのだった。