〇3年8組(音楽科)の教室、ホームルーム前
ざわざわと浮足立った生徒たちが噂話に花を咲かせている。
女子生徒1「ねえ聞いた!? めちゃくちゃイケメンがこの学校に来ているってウワサ!」
女子生徒2「聞いた聞いた! 新しい先生なのかな?」
女子生徒1「実はさっき見たんだけど、なんか雑誌に載っていた気がするんだよね!」
女子生徒2「うそっ!? 芸能人ってこと?」
女子生徒1「いや、確か音楽特集だった気が……」
女子生徒2「なにそれ、気になりすぎる! 彼女とかいるのかな? いなかったらアプローチ掛けたいー!」
女子生徒1「分かる! イケメン彼氏ほしい! あっ、ねえ。カノンも気になるよね!?」
急に話をふられた歌音は見ていた譜面から顔を上げ、困った笑みを浮かべた。
見雪歌音:かわいい系の顔つきなのに大人っぽいメイクをしている。パニックを起こすと体が先に動いてしまう。
歌音「イケメンかぁ……。確かに気になるは気になるけど、今はそれどころじゃないかなぁ」
女子生徒1「えー、なんで?」
歌音「だって今日は一限からピアノ実技あるじゃん? しかも暗譜での。……もしかして忘れてる?」
女子生徒2「え、やばっ! 今日だっけ!? 担当だれ!?」
歌音「鬼塚先生だよ。明空学園音楽科名物『指導の鬼』!」
女子生徒1・2「「……終わった。助けてカノン!」」
歌音「ええ~? もう、しょうがないなぁ。ほらコレ使って」
歌音は二人にたくさん書き込みがされた譜面を見せた。
女子生徒1「いいの!?」
歌音「うん。もう暗譜はしてあるし、後は弾くだけだからね」
女子生徒2「ありがとう~! ってか書き込みえっぐ!! なになに~? ええと『ショパンの人柄が』……って曲のことじゃないんかい!」
歌音「えっへへ! 曲のことももちろん書いてあるけど、私としては作曲家が何を思ってそれを作ったのかが気になっちゃってさー」
女子生徒1「へえ~。よく調べるねー。あたしは曲をどう演奏するかしか考えてないや。ちなみにカノンからみたショパンはどんなの?」
歌音「え、聞く? 聞いちゃう!?」
歌音「ショパンはね『ピアノの詩人』という名の通り、生涯でほとんどピアノ曲しか書かなかったんだよね! 活躍したのもコンサートホールじゃなくてサロンとか小さいところがメインだったんだけど、なんでかって言ったら(うんたらかんたら)」
ノンブレスで目を輝かせて詰め寄る歌音に、女子生徒は逃げ腰になった。
女子生徒1「あ、やっぱいいです」
歌音「なんでよー!」
女子生徒2「あはは。カノンはそういう話になると長いからね。さすが作曲家志望っていうか、芸術一家というか。でもごめん、うちら暗譜しなきゃだからさ。また今度ね」
歌音「むう、わかったよ」
歌音は唇を尖らせつつも教室を見回す。
ヴァイオリンを弾いている生徒や、譜面に何かを書き入れている生徒、歌を歌っている生徒などが見える。
(歌音のモノローグ)
ここ明空学園は様々な芸術分野に特化した私立のマンモス高校。
音楽科や絵画科はもちろん、陶芸科や建築科などもあり、それぞれの道を目指す才能あふれる学生が集う場所。
私はそんな学園の音楽科に属し、作曲家を目指している高校3年生です!
(モノローグ終了)
歌音(皆頑張ってるなぁ。私も負けていられないや! うん、頑張ろう!)
気合を入れる歌音だったが、ふと先ほどの話を思い出す。
歌音(……でも彼氏かぁ。やっぱりいいよねぇ)
どうしてもぼんやりと考えてしまう。
やはり年頃の女の子なのでそう言う話は興味があるのだ。
歌音(イケメンさんもいいけど、優しい人がいいなぁ。欲を言えば音楽の趣味が合うと嬉しいかも)
歌音(けど……)
なんて想像していた歌音だったが、わずかに表情がくもる。
歌音(中学で経験した失恋をずっと引きずっているから、今はまだ新しい恋をする気になれないんだよねぇ)
思わずため息をついた。
担任「おーっす。ホームルームを始めるぞー。席につけー」
歌音「!」
物思いにふけっていた歌音だったが担任が入ってきて我に返り、慌ててまじめな顔になる。
担任「今日はお前たちにいいニュースがある。なんと! この学園のOBに来てもらっている!」
ざわざわする教室内。歌音もだれだろうと首をかしげた。
担任「気になるか? 気になるよな? よし、じゃあ入って来てくれ」
再びドアが開き、亜麻色の髪にゆるいパーマを当てた男性が入ってきて、壇上に立つ。
「あれって……」や「もしかして!?」という期待の声が上がった。
担任「もう分かったやつもいると思うが、我が学園を飛び級で卒業した天才! そしてつい最近、日本最高峰のコンクールで最優秀賞を入賞した、あの『久遠陽暁』に来てもらったぞ!!」
陽暁「久遠陽暁です。どうぞよろしく」
久遠陽暁:濃い緑色の眠たげなたれ目が印象的なぽやんとしたお兄さん。亜麻色の髪はゆるくパーマがかかっており、いつも優し気な笑みが浮かんでいる。(20歳)
女子生徒一同「きゃーーーーーー!!」
男子生徒一同「うおおおおお!??」
にこりと優しそうな笑みをうかべる陽暁に歓声があがった。
けれど歌音だけは様子が違い、目を見開き、思わずといった様子で立ち上がる。
歌音「は、陽くん……!?」
陽暁「やあ、ノンちゃん。久しぶり」
歌音に気が付いた陽暁は優しい笑みを浮かべて小さく手を振った。
教室中の視線が歌音につきささる。
女子生徒1「ちょっとまって、どういう関係!?」
女子生徒2「なになになに~!? 説明してカノン!」
などの声があがり、大騒ぎに。
陽暁「あはは。皆元気だね。どういう関係もなにも、僕とノンちゃんは隣の家同士の幼なじみだよ」
教室内「「「ええええーーーー!?」」」
ニコニコと人好きのする笑みで幼なじみと紹介され、いろんな視線が再び歌音に突き刺さる。
けれど歌音は驚き過ぎて口をハクハクとさせたまま何も言えなかった。
担任「なんだお前ら。知り合いだったのか。なら積もる話もあるだろうが……まあ、まずはオレから説明するな」
担任「コンサートが落ち着いたから地元に帰ってきていると聞いてな。ダメもとで何かアドバイスをしてやってもらえないかと頼んだんだ。 この時期だ。進路で迷うやつも多いからな。臨時の先生みたいなもんだ」
陽暁「うん。僕もそれで後輩たちの応援ができるなら、って引き受けたんだ。もとから1週間ならこっちにいる予定だったしね。……まあそう言うことで、短い間だけどよろしくね」
再び歓声があがった。
ざわざわと浮足立った生徒たちが噂話に花を咲かせている。
女子生徒1「ねえ聞いた!? めちゃくちゃイケメンがこの学校に来ているってウワサ!」
女子生徒2「聞いた聞いた! 新しい先生なのかな?」
女子生徒1「実はさっき見たんだけど、なんか雑誌に載っていた気がするんだよね!」
女子生徒2「うそっ!? 芸能人ってこと?」
女子生徒1「いや、確か音楽特集だった気が……」
女子生徒2「なにそれ、気になりすぎる! 彼女とかいるのかな? いなかったらアプローチ掛けたいー!」
女子生徒1「分かる! イケメン彼氏ほしい! あっ、ねえ。カノンも気になるよね!?」
急に話をふられた歌音は見ていた譜面から顔を上げ、困った笑みを浮かべた。
見雪歌音:かわいい系の顔つきなのに大人っぽいメイクをしている。パニックを起こすと体が先に動いてしまう。
歌音「イケメンかぁ……。確かに気になるは気になるけど、今はそれどころじゃないかなぁ」
女子生徒1「えー、なんで?」
歌音「だって今日は一限からピアノ実技あるじゃん? しかも暗譜での。……もしかして忘れてる?」
女子生徒2「え、やばっ! 今日だっけ!? 担当だれ!?」
歌音「鬼塚先生だよ。明空学園音楽科名物『指導の鬼』!」
女子生徒1・2「「……終わった。助けてカノン!」」
歌音「ええ~? もう、しょうがないなぁ。ほらコレ使って」
歌音は二人にたくさん書き込みがされた譜面を見せた。
女子生徒1「いいの!?」
歌音「うん。もう暗譜はしてあるし、後は弾くだけだからね」
女子生徒2「ありがとう~! ってか書き込みえっぐ!! なになに~? ええと『ショパンの人柄が』……って曲のことじゃないんかい!」
歌音「えっへへ! 曲のことももちろん書いてあるけど、私としては作曲家が何を思ってそれを作ったのかが気になっちゃってさー」
女子生徒1「へえ~。よく調べるねー。あたしは曲をどう演奏するかしか考えてないや。ちなみにカノンからみたショパンはどんなの?」
歌音「え、聞く? 聞いちゃう!?」
歌音「ショパンはね『ピアノの詩人』という名の通り、生涯でほとんどピアノ曲しか書かなかったんだよね! 活躍したのもコンサートホールじゃなくてサロンとか小さいところがメインだったんだけど、なんでかって言ったら(うんたらかんたら)」
ノンブレスで目を輝かせて詰め寄る歌音に、女子生徒は逃げ腰になった。
女子生徒1「あ、やっぱいいです」
歌音「なんでよー!」
女子生徒2「あはは。カノンはそういう話になると長いからね。さすが作曲家志望っていうか、芸術一家というか。でもごめん、うちら暗譜しなきゃだからさ。また今度ね」
歌音「むう、わかったよ」
歌音は唇を尖らせつつも教室を見回す。
ヴァイオリンを弾いている生徒や、譜面に何かを書き入れている生徒、歌を歌っている生徒などが見える。
(歌音のモノローグ)
ここ明空学園は様々な芸術分野に特化した私立のマンモス高校。
音楽科や絵画科はもちろん、陶芸科や建築科などもあり、それぞれの道を目指す才能あふれる学生が集う場所。
私はそんな学園の音楽科に属し、作曲家を目指している高校3年生です!
(モノローグ終了)
歌音(皆頑張ってるなぁ。私も負けていられないや! うん、頑張ろう!)
気合を入れる歌音だったが、ふと先ほどの話を思い出す。
歌音(……でも彼氏かぁ。やっぱりいいよねぇ)
どうしてもぼんやりと考えてしまう。
やはり年頃の女の子なのでそう言う話は興味があるのだ。
歌音(イケメンさんもいいけど、優しい人がいいなぁ。欲を言えば音楽の趣味が合うと嬉しいかも)
歌音(けど……)
なんて想像していた歌音だったが、わずかに表情がくもる。
歌音(中学で経験した失恋をずっと引きずっているから、今はまだ新しい恋をする気になれないんだよねぇ)
思わずため息をついた。
担任「おーっす。ホームルームを始めるぞー。席につけー」
歌音「!」
物思いにふけっていた歌音だったが担任が入ってきて我に返り、慌ててまじめな顔になる。
担任「今日はお前たちにいいニュースがある。なんと! この学園のOBに来てもらっている!」
ざわざわする教室内。歌音もだれだろうと首をかしげた。
担任「気になるか? 気になるよな? よし、じゃあ入って来てくれ」
再びドアが開き、亜麻色の髪にゆるいパーマを当てた男性が入ってきて、壇上に立つ。
「あれって……」や「もしかして!?」という期待の声が上がった。
担任「もう分かったやつもいると思うが、我が学園を飛び級で卒業した天才! そしてつい最近、日本最高峰のコンクールで最優秀賞を入賞した、あの『久遠陽暁』に来てもらったぞ!!」
陽暁「久遠陽暁です。どうぞよろしく」
久遠陽暁:濃い緑色の眠たげなたれ目が印象的なぽやんとしたお兄さん。亜麻色の髪はゆるくパーマがかかっており、いつも優し気な笑みが浮かんでいる。(20歳)
女子生徒一同「きゃーーーーーー!!」
男子生徒一同「うおおおおお!??」
にこりと優しそうな笑みをうかべる陽暁に歓声があがった。
けれど歌音だけは様子が違い、目を見開き、思わずといった様子で立ち上がる。
歌音「は、陽くん……!?」
陽暁「やあ、ノンちゃん。久しぶり」
歌音に気が付いた陽暁は優しい笑みを浮かべて小さく手を振った。
教室中の視線が歌音につきささる。
女子生徒1「ちょっとまって、どういう関係!?」
女子生徒2「なになになに~!? 説明してカノン!」
などの声があがり、大騒ぎに。
陽暁「あはは。皆元気だね。どういう関係もなにも、僕とノンちゃんは隣の家同士の幼なじみだよ」
教室内「「「ええええーーーー!?」」」
ニコニコと人好きのする笑みで幼なじみと紹介され、いろんな視線が再び歌音に突き刺さる。
けれど歌音は驚き過ぎて口をハクハクとさせたまま何も言えなかった。
担任「なんだお前ら。知り合いだったのか。なら積もる話もあるだろうが……まあ、まずはオレから説明するな」
担任「コンサートが落ち着いたから地元に帰ってきていると聞いてな。ダメもとで何かアドバイスをしてやってもらえないかと頼んだんだ。 この時期だ。進路で迷うやつも多いからな。臨時の先生みたいなもんだ」
陽暁「うん。僕もそれで後輩たちの応援ができるなら、って引き受けたんだ。もとから1週間ならこっちにいる予定だったしね。……まあそう言うことで、短い間だけどよろしくね」
再び歓声があがった。



