2度目の初恋はセレナーデのように



 〇教室・次の日の朝
 席についてぼんやりと考え事をする歌音。
 そこに虎がやってきた。


 虎「はよ~。ぼんやりしてどうした? 足まだ痛い?」
 歌音「あ、虎くん。おはよ。足はもう全然大丈夫だよ。迷惑(めいわく)かけてごめんね」

 虎「迷惑だなんて思ってねーよ」


 前の席に腰をかける虎。


 虎「つーかあの後どうなったんだ?」
 歌音「え!?」


 昨日のことを思い出し、ドキリとする歌音。
 真っ先に思い浮かべるのは自分に覆いかぶさった陽暁(はるあき)の姿で――。




 歌音「おわあああ!?」


 虎「ええ!? ど、どうした?」


 頭に浮かんだ雑念(ざつねん)を振り払うために奇声(きせい)を上げてしまった歌音は、慌てて首を振る。


 歌音「何でもない!」

 虎「そ、そうか? ならいいけど……。てか、ちゃんと先生と話しできたか? 話したかったんだろ?」
 歌音「あ、あぁ、そっちの話ね」

 虎「? そっち?」
 歌音「な、なんでもない! 本当になんでもないからね!」


 首をひねった虎に納得顔になる歌音は強引(ごういん)に話を進めた。


 歌音「うん。話はできたよ。ただ……」
 虎「ただ?」

 歌音「あの後お兄ちゃんが急に帰ってきてさ、ちょっと色々大変だったんだ」


 げんなりとした表情になる歌音。


 虎「お兄ちゃんっていうと……ガラス細工職人の?」
 歌音「そうそう。お兄ちゃんいつも工房かアトリエに寝泊りするのになぜか昨日は帰って来てさ……」


 (昨日の回想)


 誤解(ごかい)が解消され、陽暁と向かい合っているところに大きな音を立ててドアが開く。



 (かなで)(歌音の兄)「そこまでーーーー!」


 やってきたのは兄・見雪(みゆき)(かなで)(歌音の6つ上の兄。大工のようなガテン系の服装に、三白眼(さんぱくがん)。背が高く筋肉質で見た目が怖く、声が大きい)。


 奏は歌音と陽暁の間に体を滑らせた。


 突然いるはずのない兄がきて驚く歌音と、うわっという顔をする陽暁。


 歌音「お、お兄ちゃん!? なんでここに?」

 奏「歌音が危ないかもとおもってな!」

 陽暁「エスパーなんですか?」


 奏はキッと陽暁を睨む。


 奏「帰ってきて正解だった。陽がいるってことは危ない以外のなにものでもないもんな!」
 陽暁「別に、なにもしてませんよ?」

 奏「嘘つけ! なんかいい雰囲気(ふんいき)だっただろうが!」
 陽暁「ノンちゃんが足をひねったので看病(かんびょう)していただけですよ」

 奏「なるほど! ならあとは俺が面倒を見るから、お前はもう帰れ。ほらとっとと帰れ。歌音はやらん!」
 陽暁「チッ。……それじゃあまたねノンちゃん」


 説明を受けた奏は陽暁をしっしと追い払う。

 対する陽暁はにこやかな顔で舌打ちをこぼして帰っていった。


 (回想終了)