陽暁「……なんてね。脅かしはこの辺りに……ってノンちゃん?」
陽暁はおどけてそう口にしたけれど、歌音には聞こえなかった。
歌音「……か」
陽暁「ん?」
歌音「いいわけ、あるかーーー!(1カメ、2カメ、3カメでカットイン)」
陽暁「うっ」
歌音はその掛け声とともに思い切り頭を振り頭突きをお見舞いする。
密着していた陽暁の顎にクリーンヒットした。
お互いに悶絶する二人(ディフォルメで)。
それでも身体が自由になった歌音は、痛みを主張する額もそのままに立ち上がった。
歌音「浮気! ダメ! 絶対!!」
顎の痛みで悶絶していた陽暁だったが、歌音の腹からの叫びにきょとんとなる。
陽暁「ま、まってノンちゃん。浮気って?」
歌音「陽くん、彼女、いる! 今日、会った!」
陽暁「彼女!? いないいない! っていうかなんでカタコト?」
ふしゃーっと猫のように威嚇する歌音だったが、陽暁の言葉に我に返る。
歌音「え? いないって……柏木みりあって子は……」
陽暁「みりあ? え、従兄妹の?」
歌音「い、いとこぉ~!?」
歌音(いとこって、従兄妹!? え、親戚ってこと? 血濃すぎじゃない!? っじゃなくて、あれ、従兄妹って結婚はできるんだっけ??)
混乱を極めて目を回している歌音に陽暁は納得した顔をした。
陽暁「そう言えばあいつも明空だったね。すっかり忘れてたや」
歌音「忘れてって……こ、恋人なのに?」
陽暁「恋人? ないない。あいつとは会えばすぐにケンカになる犬猿の仲だよ」
歌音「え、で、でも今日確かに……。それに昔も仲良さそうに歩いているところを見たことが……」
陽暁「昔っていうと……。ああ」
陽暁は記憶をたどるように目を閉じると、思い出したというような顔になる。
陽暁「たぶんみりあがしつこい男子に付きまとわれていたときに、僕を利用して遠ざけた時のことだと思う。身内を助けるために一役買っただけだよ。それでも鳥肌すごかったからもうやりたくないけどね」
歌音「うそ……」
衝撃の事実にポカンとなる歌音。
歌音(そ、それじゃあ失恋したと思っていたのは何だったの!? それに……)
歌音「陽くんはそう思っていても、柏木さんは陽くんのこと好きなんじゃ?」
だってなんとも思っていない人に牽制なんてしないはずだから。
と思うけれど陽暁は静かに首を横に振った。
陽暁「それもないね。むしろ嫌われているよ。それにあいつのタイプは僕とは真反対らしい。心配しなくてもあいつとはなにもないよ」
歌音「そ、そうなの?」
なんだか釈然としないけれど、嘘を言っているようには見えない。
陽暁「疑われるのも嫌だし、この際はっきりと言っておくね」
そういうと陽暁は、真っ直ぐに歌音と向き合った。



