〇歌音の部屋
ベッドに座り、足首を見られている歌音。
陽暁「うん。ちゃんと処置は受けたみたいだね。今はもうすこし冷やしておこう」
陽暁は笑顔で氷嚢を歌音の足にあてているが、どこか不機嫌そうだった。
歌音(……というより、怒ってる? まとう空気がいつもよりピリピリしているような……)
そんな空気に耐え兼ねた歌音、おずおずと口を開く。
歌音「……あの。なんで怒ってるの?」
尋ねれば陽暁の手がピクリとした。
陽暁「……」
微動だにせず固まった陽暁に首を傾げる歌音。
歌音「陽くん?」
陽暁「……ノンちゃんってさ、そういうところ、相変わらず鈍感だよね」
歌音「え?」
陽暁「僕に好きとか言ったくせに、もう他の男の子を家に連れ込もうとするなんて、怒るに決まっているでしょ」
歌音「はい? ちょっとまって、なに……うわっ!?」
耳を疑う言葉に聞き返そうとする歌音。
けれどその言葉は立ち上がり肩を押してきた陽暁に遮られる。
バランスを崩しベッドに転がる歌音。
そしてその上には――
陽暁「ダメだよ。……そんなの許せない」
歌音「……え?」
――陽暁が覆いかぶさるように乗っていた。
陽暁「君が僕の気持ちを暴こうとしてああいうことをしたんなら大正解だよ。こうして今まで隠していた感情を暴いてみせたからね。……でも。一番やっちゃいけない暴き方をしちゃったね?」
そう言ってほほえむ陽暁は、爽やかな笑みではなく――
陽暁「分からないのなら、教えてあげなきゃ。――君は僕のだ。誰にも譲ってやるつもりなんてない」
ドロドロとした激情が溶け込んだ目をしていた。



