涙が枯れてきたところだった。

前の男の子が何かを落とした。

可愛い犬が描いてあるハンカチだった。

「すいません、これ落としましたよ」

「ありがとうございます。」

忘れていた。・・・私泣いてたんだ。

「あ、あの大丈夫、ですか?」

「よければ、話、聞きますよ」

あ。どうしよう。

でも。この人なら良い気がした。「大丈夫でしょ」と自分に言い訳をして、言ってしまった。

「えっと...本当に迷惑ではなければ...お願いしたいのですが」

すごい敬語だ。知らない人と話すのが久しぶりすぎてカチンコチンになってしまった。

「どうぞどうぞ。ずっと病院にいて退屈なので」

「こっちです」

指図されるままに動く。

それにしても可愛い男の子だな。優しいし。

それから面会終了時間までずっと彼と話した。

美桜と仲が良かったこと。

美桜はいじめられていたけど私は仲良くしたこと。

美桜と仲良かったから私が目を付けられていじめられていること。

今は美桜は何も話してくれないこと。

それでお母さんが死んじゃうかもしれないこと。

全部話した。

彼は奏太と言うらしい。

それに、奏太くんと連絡先交換しちゃったし🎵

久々に笑顔で帰路についた。