「すきです、付き合ってください!」

校舎裏、私はクラス1人気者の坂 ゆうに告白されていた。

「ーーえ?」

私は目を瞬く。

ゆうが顔を上げる。

その顔は本当に美男子という感じだ。

私は今の状況が信じられなかった。

だって私はクラスでも地味で目立たない隠キャだ。

髪の毛はセットされていなくボサボサ。メイクもしていない。

なのに、どうして?

私の頭に『嘘コク』という言葉が過ぎる。

そうだ、これは罰ゲームでやっているんじゃないか?

ごめんなさいと言おうとしたところで、私はこれは了解したらどうなるんだろうと思った。

「いいですよ。」

私の声が2人しかいない校舎裏に響く。

「え、いいの?」

彼の驚きの声が聞こえた。

ゆうの顔を覗いたが、困っているようではなかった。それどころか、喜んでいる。

さすが人気者、と思った。

「これからよろしくね。」

私が目を差しのばすと、ゆうの手が私の手を握った。

「うん。」


場面は変わって、今は休み時間。

さっきの告白の真相を確かめるため、彼を追っていた。

ゆうは空き教室に何人かの友だちといた。

私はバレないように本を広げて読んでいるフリをした。

空き教室は他の子も何人かいた。

「昨日の嘘コク、どーだった?」

1人の声が聞こえ、私は思わずその方向を見た。

嘘コク、という言葉を聞くと、分かっていたはずなのに胸がチクリと痛む。

「いいって。」

ゆうの声が聞こえた。周りの笑う声も聞こえる。

「罰ゲームって知らねーのにな。」

私の本を持つ力が強くなった。

(分かってるよ。)

それからチャイムが鳴り、ゆうたちは教室に戻っていった。私も戻ることにした。


放課後、私はいつも通り1人で帰ろうとしていると、ゆうに呼び止められた。

何かと身構えた。昨日の告白が嘘ってこと?

「あのさ、一緒に帰らない?」

突拍子もないことを言われ、私は目をパチクリさせた。

「え?」

「ほら。」

手が差しだされる。

「い、いや…」

私が戸惑っていると、腕を引っ張られた。

「ちょ、ちょっと…!」

「もう、分かったから離して!」

ゆうが私の腕を離した。相変わらず手はつながれていたけど。

「何でこんなこと…嘘コクなのに。」

つい口走ってしまい、慌てて口を閉じた。

そっとゆうの顔を覗いたが、表情は変わっていなかった。

「何のこと?」

しらっと言うので、私はカッとなってつい言ってしまった。

「私、聞いたから。嘘コクだってこと。」

「じゃあ、何でいいって言ったの?」

ゆうがさらっと言う。

「そ、それは…どうなるのかなって。」

私は彼を見ずに答えた。なんだか気まずい。

「あ、じゃあね。」

そう言うと、突然手を離された。

ゆうの家に着いたようだった。

1人になった私は、1人で帰った。

さっきまで冷たかった私の手が、ゆうと手をつないだからか暖かい。

男の子と2人で帰るなんて初めてだったけど、あまり緊張しなかった。

そもそも誰かと帰るということ自体久しぶりだった。

やっぱり彼はすごいんだと思う。コミニケーション能力が高いから、誰とでも仲良くなれる。

…私みたいな子とも。

いや、私はあんな嘘つきやろうと仲良くする気などないけど。