〇 入学式後の帰路(辺りには誰もおらず、閑静な住宅街)
主人公の逢坂波瑠は新学期が始まってしまったことを憂い、とぼとぼ歩いている。
波瑠はきっちりと制服を着こなしスカートは長め、眼鏡をかけている。髪の毛も低い位置でまとめている。
帰りに見た、女子生徒に囲まれたとある金髪の男子生徒がいた光景を思い出す。
顔は見えなかったが『きっとすごくかっこいいんだろうな』と思って横を通り過ぎた。
(ああいうキラキラした人たちは学校が楽しいんだろうな‥‥)
と、桜が満開の季節に似合わず鬱々とした空気を纏っている。
波瑠はなるべく教室の隅にいたい性格で、目立ちたくなく平穏に過ごしたい。
(はあ、また憂鬱な学校生活が始まっちゃうーー)
すると、後ろから金髪で新入生の胸飾りをつけた同じ高校の男子生徒に声をかけられる。
困惑する波瑠。
波瑠(もしかして、帰りに女の子たちに囲まれてた人?)
月「波留。久しぶり、俺のこと覚えてる?」
波瑠「え‥‥?」
新入生の両耳にはシンプルなシルバーのリングピアスが多く付けてある。
派手な見た目と端正な顔立ちに、波瑠は自然と恐怖心を抱く。
波瑠(こんな人知らない、誰だろう‥‥)
波瑠が怖がっていることを察し、空気を柔らかくして話し続ける彼。
右目の下にある黒子に気づく。
笑う顔はどこかで見たことのある面影をしている。
月「昔仲良くしてくれてただろ。家が隣の弱っちいやついたじゃん」
波瑠「もしかして、月くん?」
波瑠は目の前の相手が幼馴染である神田月であることに気がつく。
幼い頃の可愛らしい容姿とはかけ離れており、気がつかなかった。
月「そう。またこの町に戻ってきたんだ」
波瑠「うそ、全然知らなかった」
月「波瑠の家の番号知ってるけど、驚かせたくてわざと伝えなかった」
屈託のない笑顔で笑う月。
昔のまんまだ、と波瑠の胸が高鳴る。
波瑠(月くん、だいぶ見た目は変わったみたいだけど笑った顔は昔のままだ)
◯回想・二人の子供時代(波瑠が小学二年生、月が小学一年生)
いつも遊ぶ公園の砂場で遊んでいる二人。
まだ波瑠は眼鏡をかけておらず、二つ結びをしている。
月は大きな瞳が垂れていて気弱そうな雰囲気。
この頃はまだ髪の毛を染めていないので黒髪の月。
二人が笑顔で遊んでいると、砂で作ったトンネルを意地悪な波瑠と同い年の男の子たちに壊される。
男の子A「こんなトンネルぐしゃぐしゃにしてやる!」
男の子B「そうだそうだ!」
波瑠「月くんとせっかく作ったのに! なにするの!」
月「トンネルがあ‥‥うう、うえええん」
トンネルを壊して喜んでいる男の子の横で、月は大きな涙を流して泣いている。
波瑠は泣いてる月を心配する。
月はひとつ年下なので、本物の姉のように振る舞っている。
波瑠「月くん、砂遊びはやめてお家に行こう?」
男の子A「なんだよ、泣き虫! 逃げるのか!」
男の子B「月はいつも泣いてばっかでだっせー!」
二人とも笑いながら波瑠と月をからかう。
波瑠は月を立たせて、手を引く。
ぐずぐずと泣きながら歩く月。
波瑠は月を安心させるために強がっている。
月「はるちゃん、僕いっつも泣いてばっかりでごめんね‥‥」
波瑠「月くんはなにも悪いことしてないのに、なんで謝るの? 砂のトンネルも、また今度作って遊ぼ!」
自分が笑わないと月が不安だろうと思い、精一杯の笑顔を浮かべる波瑠。
月は波瑠の手が震えていたことに気がついていたが、なにも言えなかった。
ただ、波瑠の笑顔を潤んだ瞳で見つめているだけ。
【回想終了】
◯入学式後の帰路
波瑠「昔のこと思い出しちゃったけど、ほんとうに月くん変わったね」
月「うん、もう泣き虫の俺じゃないよ。俺さ、強くなれたら波瑠に伝えたいことがあったんだ」
波瑠(伝えたいことってなんだろう‥‥?)
不思議に思い、見つめているとそっと月に手を握られる。
どきん、と心臓が大きく跳ねてうるさい。
波瑠「つ、月くん? なんで手握ってーー」
そのまま月に腕を引かれ、彼の胸の中に飛び込む形になり抱きしめられる。
ふわりと香る月の匂い。
月「昔からずっと波瑠が好きなんだ。どうしても波瑠を忘れられなくて、この町に戻ってきた。
波瑠、俺と付き合って欲しい」
すっと月の大きな手のひらが片方の頬に添えられ、反対側の頬にキスを落とされる。
波瑠「へ‥‥?!」
顔を真っ赤にし、固まる波瑠。
月「突然言われて、びっくりしてるよな。でも、今の言葉になにひとつ嘘はないから」
真剣な瞳に見つめられ、さらに体温が上がる。
勢いよく離れる波瑠。
波瑠「きゅ、急にそんなこと言われても、付き合えません!」
鞄をぎゅっと握り締め、全力で断る波瑠。
月「ふうん、」
月の表情が曇り、ゆっくりと近づいてくる。
両手で頬を包まれ、目線を合わせてくる月。
月「いいよ、今は俺のこと好きじゃなくても。いつか絶対好きになる日が来るから」
昔の面影もなく、端正な顔を緩めて優しく笑う月。
波瑠「〜〜〜っ! そ、そんなのわかんないよ!」
月「分からなくないーー俺、絶対諦めないから」
波瑠(な、なにこの急展開〜〜〜!!)
(神様、久しぶりに再会した幼馴染が思わぬ成長を遂げ、挙げ句の果てには突然告白してきたらどうしたらいいんですか‥?!)
波瑠は頭を抱える。
そんな様子も可愛いなと思って、月は波瑠を見つめている。
月「そういえば、波瑠って目悪かったっけ」
ぎくり。波瑠はさっと顔を逸らす。
実は波瑠の眼鏡は度が入っていない。
目立ちたくないが故に、眼鏡をかけている。
波瑠「ちょ、ちょっとだけね。本の読み過ぎかなあ、あはは」
ぎこちなく誤魔化す波瑠を、月は疑いの目でじーっと見つめる。
月「なーんか怪しいなあ、その答え方」
波瑠「そ、そんなことないよ。それより月くんの家もまたこっち側なの?」
月「ううん、今度は駅の反対側」
波瑠「え‥‥?」
波瑠(じゃあわざわざ私を追ってきてくれたのーー?)
月「学校で波瑠に話しかけようとしたら、すぐ帰っちゃうんだもん」
拗ねた顔は昔の面影があり、思わず波瑠は微笑んでしまう。
波瑠(拗ねた時に頬をかく癖、変わってないんだなあ)
月「なにその顔。弟を見るみたいな目してんね」
波瑠「実際月くんは弟みたいだったから」
波瑠が笑うと、また月にぐっと腕を引かれた。
月「よく見て。もう弟見たいなんて、言わせないから」
もう少し近づいたらキスしてしまいそうなほど、顔が近くに寄る。
思わず月の胸を強く押し、咄嗟に波瑠は離れた。
波瑠「わっ、ごめん!」
月「波瑠、力が強いよ。容赦ないな」
そう言いながらも嬉しそうに笑っている月。
月「これからはちゃんと、男として意識してよね」
夕陽が彼の明るい髪にあたり、きらきらと輝いている。
久しぶりに会った幼馴染は、とんでもないイケメンに育ってしまっていた。
主人公の逢坂波瑠は新学期が始まってしまったことを憂い、とぼとぼ歩いている。
波瑠はきっちりと制服を着こなしスカートは長め、眼鏡をかけている。髪の毛も低い位置でまとめている。
帰りに見た、女子生徒に囲まれたとある金髪の男子生徒がいた光景を思い出す。
顔は見えなかったが『きっとすごくかっこいいんだろうな』と思って横を通り過ぎた。
(ああいうキラキラした人たちは学校が楽しいんだろうな‥‥)
と、桜が満開の季節に似合わず鬱々とした空気を纏っている。
波瑠はなるべく教室の隅にいたい性格で、目立ちたくなく平穏に過ごしたい。
(はあ、また憂鬱な学校生活が始まっちゃうーー)
すると、後ろから金髪で新入生の胸飾りをつけた同じ高校の男子生徒に声をかけられる。
困惑する波瑠。
波瑠(もしかして、帰りに女の子たちに囲まれてた人?)
月「波留。久しぶり、俺のこと覚えてる?」
波瑠「え‥‥?」
新入生の両耳にはシンプルなシルバーのリングピアスが多く付けてある。
派手な見た目と端正な顔立ちに、波瑠は自然と恐怖心を抱く。
波瑠(こんな人知らない、誰だろう‥‥)
波瑠が怖がっていることを察し、空気を柔らかくして話し続ける彼。
右目の下にある黒子に気づく。
笑う顔はどこかで見たことのある面影をしている。
月「昔仲良くしてくれてただろ。家が隣の弱っちいやついたじゃん」
波瑠「もしかして、月くん?」
波瑠は目の前の相手が幼馴染である神田月であることに気がつく。
幼い頃の可愛らしい容姿とはかけ離れており、気がつかなかった。
月「そう。またこの町に戻ってきたんだ」
波瑠「うそ、全然知らなかった」
月「波瑠の家の番号知ってるけど、驚かせたくてわざと伝えなかった」
屈託のない笑顔で笑う月。
昔のまんまだ、と波瑠の胸が高鳴る。
波瑠(月くん、だいぶ見た目は変わったみたいだけど笑った顔は昔のままだ)
◯回想・二人の子供時代(波瑠が小学二年生、月が小学一年生)
いつも遊ぶ公園の砂場で遊んでいる二人。
まだ波瑠は眼鏡をかけておらず、二つ結びをしている。
月は大きな瞳が垂れていて気弱そうな雰囲気。
この頃はまだ髪の毛を染めていないので黒髪の月。
二人が笑顔で遊んでいると、砂で作ったトンネルを意地悪な波瑠と同い年の男の子たちに壊される。
男の子A「こんなトンネルぐしゃぐしゃにしてやる!」
男の子B「そうだそうだ!」
波瑠「月くんとせっかく作ったのに! なにするの!」
月「トンネルがあ‥‥うう、うえええん」
トンネルを壊して喜んでいる男の子の横で、月は大きな涙を流して泣いている。
波瑠は泣いてる月を心配する。
月はひとつ年下なので、本物の姉のように振る舞っている。
波瑠「月くん、砂遊びはやめてお家に行こう?」
男の子A「なんだよ、泣き虫! 逃げるのか!」
男の子B「月はいつも泣いてばっかでだっせー!」
二人とも笑いながら波瑠と月をからかう。
波瑠は月を立たせて、手を引く。
ぐずぐずと泣きながら歩く月。
波瑠は月を安心させるために強がっている。
月「はるちゃん、僕いっつも泣いてばっかりでごめんね‥‥」
波瑠「月くんはなにも悪いことしてないのに、なんで謝るの? 砂のトンネルも、また今度作って遊ぼ!」
自分が笑わないと月が不安だろうと思い、精一杯の笑顔を浮かべる波瑠。
月は波瑠の手が震えていたことに気がついていたが、なにも言えなかった。
ただ、波瑠の笑顔を潤んだ瞳で見つめているだけ。
【回想終了】
◯入学式後の帰路
波瑠「昔のこと思い出しちゃったけど、ほんとうに月くん変わったね」
月「うん、もう泣き虫の俺じゃないよ。俺さ、強くなれたら波瑠に伝えたいことがあったんだ」
波瑠(伝えたいことってなんだろう‥‥?)
不思議に思い、見つめているとそっと月に手を握られる。
どきん、と心臓が大きく跳ねてうるさい。
波瑠「つ、月くん? なんで手握ってーー」
そのまま月に腕を引かれ、彼の胸の中に飛び込む形になり抱きしめられる。
ふわりと香る月の匂い。
月「昔からずっと波瑠が好きなんだ。どうしても波瑠を忘れられなくて、この町に戻ってきた。
波瑠、俺と付き合って欲しい」
すっと月の大きな手のひらが片方の頬に添えられ、反対側の頬にキスを落とされる。
波瑠「へ‥‥?!」
顔を真っ赤にし、固まる波瑠。
月「突然言われて、びっくりしてるよな。でも、今の言葉になにひとつ嘘はないから」
真剣な瞳に見つめられ、さらに体温が上がる。
勢いよく離れる波瑠。
波瑠「きゅ、急にそんなこと言われても、付き合えません!」
鞄をぎゅっと握り締め、全力で断る波瑠。
月「ふうん、」
月の表情が曇り、ゆっくりと近づいてくる。
両手で頬を包まれ、目線を合わせてくる月。
月「いいよ、今は俺のこと好きじゃなくても。いつか絶対好きになる日が来るから」
昔の面影もなく、端正な顔を緩めて優しく笑う月。
波瑠「〜〜〜っ! そ、そんなのわかんないよ!」
月「分からなくないーー俺、絶対諦めないから」
波瑠(な、なにこの急展開〜〜〜!!)
(神様、久しぶりに再会した幼馴染が思わぬ成長を遂げ、挙げ句の果てには突然告白してきたらどうしたらいいんですか‥?!)
波瑠は頭を抱える。
そんな様子も可愛いなと思って、月は波瑠を見つめている。
月「そういえば、波瑠って目悪かったっけ」
ぎくり。波瑠はさっと顔を逸らす。
実は波瑠の眼鏡は度が入っていない。
目立ちたくないが故に、眼鏡をかけている。
波瑠「ちょ、ちょっとだけね。本の読み過ぎかなあ、あはは」
ぎこちなく誤魔化す波瑠を、月は疑いの目でじーっと見つめる。
月「なーんか怪しいなあ、その答え方」
波瑠「そ、そんなことないよ。それより月くんの家もまたこっち側なの?」
月「ううん、今度は駅の反対側」
波瑠「え‥‥?」
波瑠(じゃあわざわざ私を追ってきてくれたのーー?)
月「学校で波瑠に話しかけようとしたら、すぐ帰っちゃうんだもん」
拗ねた顔は昔の面影があり、思わず波瑠は微笑んでしまう。
波瑠(拗ねた時に頬をかく癖、変わってないんだなあ)
月「なにその顔。弟を見るみたいな目してんね」
波瑠「実際月くんは弟みたいだったから」
波瑠が笑うと、また月にぐっと腕を引かれた。
月「よく見て。もう弟見たいなんて、言わせないから」
もう少し近づいたらキスしてしまいそうなほど、顔が近くに寄る。
思わず月の胸を強く押し、咄嗟に波瑠は離れた。
波瑠「わっ、ごめん!」
月「波瑠、力が強いよ。容赦ないな」
そう言いながらも嬉しそうに笑っている月。
月「これからはちゃんと、男として意識してよね」
夕陽が彼の明るい髪にあたり、きらきらと輝いている。
久しぶりに会った幼馴染は、とんでもないイケメンに育ってしまっていた。
