溺愛してみたい君振り向かせたくて

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「ご、ごめんなさい!」

  えみは、震えた声音で謝ると、 慌てて俺から離れた。

  俺を誰かと間違えた?

  心の中で現況を反芻した俺は、胸の奥がチクリと痛むのを覚えている。

  目の前の赤くなっているえみにときめいてもいる。

 胸の高鳴りを抑えきれない。

「……えみ、目覚めた? 着いたよ」

 俺はどうにかこうにか、冷静さを装った。

「ご、ごめんなさい。わ、私、寝起きが悪くって……」

 えみは、しどろもどろになっている。

「ほら、外出よう」

 俺は、そう言って立ち上がる。

 頭上の荷台から、自分とえみのリュックサックを拾い上げた。

 えみは、困惑顔で俺を見ている。

「えみ、さあ、行こう」

「ありがとうございます」

 えみは、俺から自分の荷物を取り相変わらずおっとりとした声音でお礼を言う。

 俺は、自分の片方の手があいていたので、立ち上がった小さな手を握りしめた。

 どうしたものか、さっきの甘ったるい声音が耳に残っている。

 他にも何か言おうにも、言葉が出てこない。

 間違えられたショックと、あの時のえみの可愛らしい仕草。

 俺の胸奥を軋ませていたーー。